春闘は毎年4月の新年度スタートを前に、各種産業の労働組合と企業との間で労働条件をめぐって行われる交渉で、翌年度の産業全体の基本給および奨励金の調整幅を確定する役割もある。
自動車や電気機械などの輸出産業の主要企業は、円安の影響もあって2014年度は過去最高の営業収入を達成した。また日本銀行(中央銀行)の15年度の消費者物価指数は2.9%前後になるとの予測を踏まえ、労働組合側は2%のベアを要求した。交渉の過程で、自動車産業の最大手・トヨタが基本給を月4千円引き上げることに同意。日産自動車も同5千円の引き上げに同意して、製造業大手の中で最大の上げ幅となった。日立やパナソニックをはじめとする6大消費電子大手は、同3千円の引き上げを決定した。日本の主要企業は2年連続で賃上げを実施したことになる。これまで主要企業の基本給は数十年にわたりベアなしの状態が続いていた。
昨年4月に消費税率が3%引き上げられて8%になると、日本の世帯の実質的な購買力水準が低下し、個人消費は低迷し、一度は好転した日本経済の回復の流れが暗礁に乗り上げた。安倍晋三首相はたびたびコメントを発表して企業に圧力をかけ、賃金を引き上げて、国内消費を促すよう求めた。こうしてもともと市場での行為だった労使交渉が「官製春闘」などと揶揄されるようになった。
交渉の結果をみると、基本給の上げ幅は過去最高を記録したものの、最終的な賃上げ幅は労働組合の要求とは隔たりがある。たとえば、労組側はトヨタに月6千円のベアを要求したが4千円にとどまった。電機・電子企業の労働組合・電気連合は6千円のベアを要求したが3千円にとどまった、などだ。多くの企業がこれから状況が変わって経営が低迷することを懸念して、固定支出の大幅な増加には消極的であり、ここには企業が今後の経済情勢に対して十分な信頼感を抱けていない様子が反映されている。