オバマ大統領と安倍晋三首相は環太平洋経済連携協定(TPP)締結を目指している。その根本的な動機は、中国に対する戦略的なけん制だ。しかしTPPはその戦略的な希望を実現できない。英フィナンシャル・タイムズ紙が伝えた。
米日がTPPに寄せる地政学的な期待は非合理的
TPPに関する重要な事実は、これが米国と日本のほかに環太平洋の10カ国が参加する協定だということだ。これに中国は含まれない。TPPを巡る米政府の議論の多くは、貿易交渉につきまとうありふれた議論、つまり農家、通貨、知的財産に関することだ。しかしオバマ大統領と安倍首相の根底にある動機は戦略的なものだ。米日にとって残念なことに、TPPは仮に締結されても、その地政学的な期待を全てかなえられるほど意味あるものでもない。
TPPの背景にある戦略的な論理を議論することは難しい。なぜなら、米国は最近まで中国を除外している理由について率直に語ることはなかったからだ。公式な見解としては、中国経済はTPPに参加するほど十分に開かれていないということだった。しかしオバマ大統領は数週間前、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、TPPが貿易問題以上であるとの認識を示した。TPP締結が重要な理由とについて、「もし米国がルールを作らなければ、中国が確立してしまう。そうなれば米国が締め出される。米国は、中国が規模の力で地域の国々を抑え込むことを望まない」と明かした。
オバマ大統領は、議論をなおも経済の範囲内に落とし込んだが、米外交政策機関は、パワーポリティクスによるさまざまな問題の議論に前向きだ。最近話題になった米外交問題評議会の報告書によると、「中国を自由な国際秩序に統合する」という過去数十年の米国の取り組みが、実際は裏目に出ていると指摘した。いまや中国の力が米国の「アジアの優位性」を脅かしているからだ。
日本はより強い戦略的な動機を持つ。日本は当初、TPPの交渉を回避するのは、国内で力を持つ有権者の反発を避けるためとしていた。しかし安倍首相の中国の台頭への恐怖は、農家に対する恐怖を上回った。安倍首相はTPPを、米日同盟および日本のアジアにおける地位の強化の鍵として捉え始めた。この日本の首脳は先ほど米議会演説で、TPPは根本的に「民主と自由」に関するものであると述べ、「その戦略的な価値は並々ならぬものだ」と強調した。