日本が今後5年間でアジアのインフラ整備に1100億ドルを投資することを計画中という情報が、このほど注目を集めている。多くのメディアは、日本が設立準備中のアジアインフラ投資銀行(AIIB)と主導権を争い、中国の影響力の急速な拡大を抑制しようとしていると分析した。
中国がBRICS開発銀行とAIIBの設立を提唱すると、発展途上国と国際社会から広く承認され、支持を集めた。そのうちAIIBには、多くの先進国が積極的に加わった。しかし多くの人は中国の動きについて、「中国には金があるから」と単純に結論づけている。日本が1000億ドルを投じるのも、「AIIBの資本金が1000億ドルで、中国の単独出資ではなく57の創設メンバー国による共同出資ならば、日本が単独で1000億ドルを持ち出せば中国よりも太っ腹に見える」という仮定に基づく可能性が高い。
筆者は日本の狙いを論じるつもりはないが、仮に中国の影響力の急速な拡大を抑制するという目的があるならば、その実質的な効果については疑問視せざるを得ない。
中国の世界的な影響力の急拡大の原因を、単純に経済力と結論付けるならば全面的ではない。グローバル化の時代において、一国の影響力は力強い経済力の支えが必要だが、決して経済や金融の実力だけの問題ではない。産業革命以降、世界には多くの経済強国が誕生し、国際事業に重要な影響を及ぼした。しかしこの数百年のうち、真の主導権を握ったのは英国と米国の2カ国のみだ。英米がそれぞれの時期で強い影響力を持てたのは、力強い経済だけが原因ではなかった。他にも英国に始まる資本主義経済、米国がけん引する世界資本主義の拡張と蔓延という原因があった。その他の経済強国が英米ほどの高みに達するためには、経済力よりも後者の影響力の方が重要だ。