――6月に日本記者クラブで行われた、河野洋平・元官房長官と戦後70年を語る対談では、安保法制撤回について強く語られていますね。
村山 現在審議中の安保関連法案について、日本の憲法学者の絶対多数は違憲と指摘しています。憲法に反する法案が提出され、審議することは、国会自体が憲法違反をすることになります。しかも総理自らが国民の理解を得ていないと認めながら、審議を打ち切り、数の力での採決で成立をはかろうとしているのは、許すことのできない暴挙です。平和憲法を守り、戦争に反対することは国民の願いです。国会はこの国民の声に応えて廃案にすべきです。
――現在の日本と世界の情勢についての見解はいかがでしょうか。
村山 今の日本政府は、領土問題や中国の南沙諸島の問題などで中国に対する警戒心を強め、また北朝鮮の核問題などにも触れ、現在世界で一番危機にさらされているのは、アジアであるという危機感を必要以上に醸し出しています。
もし危機感があるのなら、それを除去する外交努力こそが求められるべきです。中国は覇権を求めないというのが、基本的な方針になっています。もし戦争があれば、今日の繁栄や経済大国としての姿はないはずで、中国は戦争を決して望んでいないと私は認識しています。その姿をまずは信頼し、もし危機感があればそれを除去するべく、話し合いで解決する道筋を求めることが大切です。軍備にしても、「あちらがこれだけ備えているんだから、こちらだって」とお互いに備え合うことは、逆に戦争を誘発する原因にもなりかねません。
米国は日中間の戦争を決して望んでいないと思います。むしろ日本には中米間の緩衝材になってほしいと思っているはずです。安保条約の関係上、日本にはもっと軍事力の面で協力をしてほしいと思っているかもしれません。