東京都は日本で面積が三番目に小さい地方自治体であるため、当然土地の値段は高い。ならばとても高い建物が建てられることになるのかというとそういう訳ではなく、実際は環境や歴史、人々の考え方など様々な理由から、にぎやかではあるものの「高さ」は好まれていない。中青在線が伝えた。
日本に来た中国人の多くが東京の建物は思ったよりも高くないことに気づく。また普通の住宅街に一歩足を踏み入れると10平方メートルちょっとの小さな戸建や平屋が立ち並び「日本の大都市はこんなにこじんまりしていて、数多くの摩天楼が立ち並ぶ中国の大都市とは趣が全く異なる」と感じるだろう。しかし「こんな都市でも、どこに行っても常に青空を眺め、陽光にあたることができて、圧迫感がないというのはいいものだ」とうらやましく感じるかもしれない。
実際は外国人が現在目にする東京は以前に比べ随分高くなっている。30数年前に初めて日本に訪れた時、この都市はもっと開けている感じがした。ここ数年、湾岸地区にはたくさんのビル型建築物が建てられ、さらにオリンピックと中国人の不動産購入ブームも重なり、増築がさらに進んでいる。都市の風の通り道が次第にふさがれていったことは夏場の「ヒートアイランド現象」と無関係ではあるまい。
理由を調べてみると、日本は確かに地震や台風に耐えうる1,000m級の摩天楼を建造する能力を有しているが、この国の建築業者のほとんどが、高さが500mを超える建築物は大量のコンクリートでその強度を維持しなければならず、広い内部空間を確保できないため、ランドマークとしての用途でしか利用できず、人が居住するのにふさわしくないと考えており、そのためこのようなブームに迎合していない。
もう一つには歴史的な伝統がその理由に挙げられる。日本は明治時代になってようやく3階建てが許されたほどで、平屋の歴史が非常に長かった。また東京は明治5年(1872年)に大火災が発生し、「銀座レンガ街計画(銀座規則)」が制定され、建築物の高さは道の広さにあわせるように要求された。このように安全面または景観の上からも道理に適っており、人々の心に深く根付いている。
また東京の建築物が外国人が思うほど高くないのは、あるいは「日照権」という概念が特別発達しているせいであるかもしれない。建物を建てる際にはその周囲の住民の日照権を妨げてはならず、多くの住宅街では10mの高さ制限のほか、屋根の角度まで厳格に規定されている。
そのため、日本の大都市はこれからも美しい「東京日和」を維持できるだろう。(編集TG)
(著者:劉黎児氏。日本に住むベテラン報道人で著名な作家。台湾大学歴史科を卒業し、台湾大学歴史所に勤務。1982年に来日し、台湾紙「中国時報」駐日特派員、東京支局長を経て、現在は作家として活躍している。)
「人民網日本語版」2015年12月5日