日本の朝日新聞は最近、「学生服、値上げの春羊肉『爆食』、日本に余波」との記事を掲載し、中国人の大量の羊肉食が日本の学生服の値上がりを招いていると報道した。そのロジックはこうである。中国では羊肉を使った「火鍋」のブームが起きており、羊肉の輸入量が急増している。オーストラリアとニュージーランドの畜産農家はそのため、毛用の羊ではなく肉用の羊を飼育するようになっている。日本の学生服の材料である毛用種の減少によって、日本の学生服は値上がりしている。だが記者の調査によると、この報道は事実とまったく異なる。
中国で羊肉ブームが起こっているか、日本の学生が羊毛の学生服しか着ないのかをひとまずわきに置くとして、オーストラリアとニュージーランドの両国の関連産業協会の報告を見ただけでも、「朝日新聞」の報道がいかに根拠を欠いているかがわかる。
オーストラリア肉類・牧畜業協会の2015年の報告によると、オーストラリアの羊肉輸出にはここ2年、目立った増減はなく、毎年約23.5万トンを保っている。今後は上昇が見込まれているものの、2020年に28万トンに達すると見られるにすぎない。オーストラリア全国の羊肉生産量は2016年、3%減少するとさえ考えられている。
一方の羊毛は、オーストラリア産毛予測委員会(AWPFC)のRussell Pattinson代表によると、2015年の全豪の綿羊飼育量は小幅に減少したものの、オーストラリアの多くの羊毛生産区での生産状況は良好で、羊1頭当たりの平均原毛生産量はいくらか高まっており、両者の相殺によって羊毛の総体的な生産量には大きな変化は起きていない。このため2015年の羊毛供給量は安定を維持した。綿羊飼育量が減少した原因は気候の乾燥が考えられる。
ニュージーランド牛肉羊肉協会の報告によると、2014—2015財政年度、ニュージーランドの羊肉輸出は全体として1.5%の減少となった。これは主に、中国への輸出量が下がったためで、アジア北部地区全体への輸出量は10%減少した。中国への羊肉輸出量が下降しているのは、中国国内の羊肉生産量が急速に成長しているためと考えられる。
報告によると、ニュージーランドの2015年下半期から2016年上半期にかけての羊毛の生産量と輸出量は小幅な減少となる見通しだ。だが羊毛生産量の減少の原因はやはり気候の乾燥であり、中国とはまったく関係ない。