昨年夏より12%の円高が生じており、訪日客数の記録更新を続ける観光業の繁栄を脅かす恐れがある。英フィナンシャル・タイムズ(電子版)が伝えた。
日本政府は2020年までに、訪日客数と消費額を倍増(延べ4000万人、730億ドル)させる計画を立てているが、実現が危ぶまれている。また円高進行は、アベノミクスにとって最も重要な訪日客に悪影響を及ぼす恐れがある。
SMBC日興証券の渡辺浩志エコノミストは、「訪日客数が減少すれば、日本経済の回復にとって極めて不利である。また円安に依存しすぎたアベノミクスの限界を露呈することになる」と指摘した。
訪日客数が記録を更新しており、日本の百貨店に来店した観光客数は前年同期比7.8%増となっているが、4月の販売量は激減した。うち外国人客の高級ブランド小売店での消費額は、前年同期比9.3%減となった。
一部の小売店はこのパラドクスを受け、暗黒時代の到来を恐れている。訪日客のうち4分の1を占める中国人客の購買行為は2016年より、当初の爆買いから厳選に変わりつつある。
これは中国人客に占めるリピーター率の上昇が、重要な原因と分析されている。中国は今年4月上旬、高級品の代理購入行為の撲滅を目的とする税関制度を発表し、日本の百貨店にとって痛手となった。
高級品の販売に影響が生じているが、中国人客は依然として日本製化粧品の購入に意欲的だ。リヨン証券会社東京支店の小売業界アナリストは、「購入方法に密かに変化が生じている。観光業の繁栄によって利益を手にした資生堂は、外国人客向けの年間売上目標を3割引き上げた」と話した。
今年4月の訪日客数は延べ200万人を突破し、単月としては過去最多を記録した。この数値は安倍政権発足後から間もない2013年4月、経済回復の取り組みが始まった当時の2倍以上となっている。
2013年から今年の年初までの円安進行は、観光業に莫大な利益をもたらした。日本旅行と飲食の費用が下がり、日本で人気の高級品の価格も香港を下回った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月24日