米国の民意に生じた微妙な変化は、第二次大戦の歴史が時間によって薄められた結果であり、日本のがむしゃらな文化的宣伝、米国の地政学的戦略による需要の結果でもある。しかしながら戦後の米大統領と政府高官は、日本に利用されるのを避けるため、広島訪問を極力避けてきた。さらに米国政府は第二次大戦の歴史の定義を覆そうとしておらず、原爆投下について絶対に謝罪しないという原則を守っている。
しかしながらオバマ大統領は、米国の政治を覆す初の大統領になった。オバマ大統領はなぜ、これほど大胆になれたのか?
まずは理想主義的な個性だ。オバマ大統領には、クリーンエネルギーと地球にやさしい文明のほか、核なき世界の実現という理念がある。
オバマ大統領の核なき世界という理想主義は、人々に尊重されており、世界的な成果も手にしている。しかし広島訪問という理想主義には、現実主義的な目的が混ざっている。まず、これによって米日同盟関係を強化し、後者のために米日関係の新たなモデルを樹立することができる。さらにオバマ大統領は任期満了を控えており、ためらわぬ外交という行為によって、オバマ政権に理想的なピリオドを打つ必要がある。オバマ大統領の広島訪問は、過去に例を見ない外交の成績をもたらした。
オバマ大統領の広島訪問について、安倍首相は震える声で「心より歓迎する」と表明してきた。これは日本政府が再びオバマ大統領を利用することで、米日同盟関係を強化し、さらに日本の第二次大戦の被害者としての印象を強化できるからだ。米日両国が互いに支援し、利用していることが分かる。むろんオバマ大統領の理想主義、安倍首相の功利主義が重なった成果と読むこともできる。
これが物議を醸す、北東アジア3カ国の関係のさらなる悪化を引き起こす訪問であることは間違いない。米国はオバマ大統領の広島訪問は謝罪ではないと再三強調しているが、日本側は米大統領が自らの行為で被爆者に配慮していると感じている。これは外交辞令の謝罪よりも重要な事だ。日本による侵略の真の被害国である中韓両国は、この70年間に渡り日本政府の心からの謝罪を一声も耳にしていない。その日本が逆に被害者になれば、北東アジア3カ国の関係さらに悪化させるだけだ。(筆者:張敬偉 チャハル学会研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月27日