日本政府は2日、2016年版「防衛白書」を了承した。これまでの白書と比べ、今年の白書は日本の安保環境の悪化を極力誇張し、再武装の傾向についてあの手この手で弁解している。白書は中国に矛先を向け、中国批判の声を強めた。中国に東中国海・南中国海における軍事動向への「強い懸念」を示し、中国が「力により現状を変え、高圧的とも言える対応を継続させている」とした。中国に対するさらなる強硬な姿勢を示してみせた。
日本の中国への謂れなき批判には憤りを禁じ得ないが、それよりも懸念すべきは、安倍政権が発足以来、中日関係に関する価値ある修復に取り組んでおらず、むしろ多くの問題で中国を敵視する態度を取り、国際秩序の中で中国けん制の積極的な画策者・行動者になっていることだ。これは大国の政府の中では極めて稀であり、不可解だ。中国の主な駆け引きの相手である米国でさえ、中国に関する問題では慎重になり、徹底的な対立を回避している。
同白書についてはさまざまな分析がなされているが、我々は戦後日本の安全政策の流れを振り返ることで分かる、その「大国化」「正常化」およびこの2者の延長線上にある「外延化」という大きな特徴に警戒を強める必要がある。安倍政権の発足以来、この傾向は強まっており、最終点に到達した。東アジアの国際秩序の安定の基盤が、形骸化する恐れが出ている。今回の出来事は、この傾向の新たな例証となった。
戦後日本の外交・安全政策は長期に渡り、戦後初期の吉田茂首相によるいわゆる「吉田ドクトリン」を守ってきた。この路線は日本の外交・安全の三本柱を「軽武装」「日米安保」「経済中心主義」とした。時間の流れに伴い、対外政策の計画・操作において、日本政府は時に探りを入れる動きを見せてきたが、基本的には「吉田ドクトリン」の軌道上を歩んできた。