日本の明仁天皇(82)は8日午後、ビデオメッセージで「生前退位」の意向を日本国民に表明した。30年弱に渡る平成が、終わりに向かい始めたようだ。
日本政府が皇室典範の項目を改正することで、天皇退位の技術的な解決策を見出すと指摘されている。しかし皇室典範が日本国憲法に基いていることを忘れてはならない。この法律を改正しようとするならば、憲法からその根拠を見出さなければ、完全に問題を解消することはできない。
また明仁天皇の退位が、憲法に及ぼす影響はそれだけには留まらない。例えば日本国憲法第1条は、天皇は日本国の象徴、日本国民全体の象徴と明確に規定している。憲法第1以上は天皇の存在を前提としており、かつ天皇は国と国民の統合の象徴であるとしている。それでは明仁天皇が退位するならば、その日本国の象徴としての地位はいかに処理されるべきか?次の天皇に完全に譲り渡すのか、それとも共有するのか?この現在の憲法における矛盾を解消しようとするならば、皇室典範などの一般法の項目を改正するだけでは無理だろう。
過去を振り返ると、明仁天皇は平和主義者であり、即位から30年弱に渡り靖国神社を参拝しておらず、父の裕仁天皇とは対照的だ。唯一訪中した日本の天皇として、歴史問題について中国に謝罪を表明し、日本の右翼をきまり悪くさせた。そのため明仁天皇は国内外で支持されており、退位の意向が伝えられると、日本人の8割以上が理解と支持を表明した。この面から見ると、天皇の願い通りの退位を求める強い国民の声は、改憲に関する議論を必然的に引き起こし、右翼が現行の憲法体制を攻撃するための砲弾になる可能性がある。これは遺憾なことだと言わざるをえない。
現行の日本国憲法は、第二次大戦中に同じく戦争の苦しみを味わった日本人が、反省を経て下した歴史的決断を集約している。しかしこれは、この憲法が完璧であることを意味しない。今回の退位は、それをある程度説明している。しかし長年に渡る日本社会の保守化・右翼化に伴い、平和憲法をめぐる攻防・対抗が激化し、憲法に存在する問題を計算抜きで改正することがほぼ不可能になっている。現状では、憲法9条以外から改正に着手した場合も、安倍首相を始めとする右翼勢力が手にする重大な突破と見なされる。天皇の退位の意向により、平和憲法はさらに厳しい試練を迎える。日本の先行きはこれにより、ますます不透明になる。(筆者:孟明銘 復旦大学歴史学部博士課程在学、日本問題専攻)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年8月10日