バブル崩壊後、住宅価格が理性的に
その他の世界的な大都市と比べ、日本の大都市の住宅価格は注目に値しない。ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコなどに及ばず、さらには中国の北京市・上海市・深セン市といった1級都市にも及ばない。バブル崩壊後の住宅価格の伸び率は、世界の多くの人気投資先をはるかに下回っている。
英国、カナダ、中国、米国の住宅価格指数を比べると、日本が最も低くなっている。91年のバブル崩壊以降、大きな高騰を見せていない。日本の住宅価格の伸び率は1980年から現在まで、この5カ国のうち最も低く、4カ国との間に大きな開きがある。
まず住宅価格が伸び悩んでいるのは、「失われた20年」の結果と判断できる。その一方で、微増は日本の住宅市場が理性的であることを示している。住宅価格は、建物そのものの価値からかけ離れていない。英国、米国、カナダ、中国の4カ国を見ると、高騰は一度に留まらず何度も生じており、かつその上げ幅はバブル崩壊前の日本をはるかに上回る。
ここからは「住宅価格対賃貸料比」という指標により、住宅のバブルの程度を比較していこう。
住宅価格対賃貸料比は、住宅価格に占める賃貸料の割合だ。住宅取得価格の回収期間が短いほど、投資の価値が高いということになる。世界的な基準によると、1:200から1:300が住宅価格の健全な範囲だ。これが1:300を上回るようだと(300ヶ月以上の家賃で住宅価格を取り戻せる)、不動産バブルが生じていることになる。これが1:200以内であれば、投資の価値があることになる。
東京や大阪ではこの割合が高く、小型・中型物件の利回りは年平均で4−6%となっている。これに基づく住宅価格対賃貸料比は1:200から1:300で、200−300ヶ月分の家賃でコストを回収できることになる。国際的な基準によると、日本の大都市の小型・中型物件は健全な範囲内にある。日本の小型・中型物件の中で8−10%という利回りは珍しくなく、仲介業者を見つければこの高い利回りは期待できる。これならば住宅価格対賃貸料比が1:120から1:150になり、投資価値が極めて高いと言える。
東京の住宅価格対賃貸料比(小型・中型物件)を同クラスの国際的な大都市と比べると、ニューヨークとサンフランシスコは1:255ほど、ロンドンは1:400、香港は1:428、シンガポール(政府系住宅を除く)は1:461、広州は1:470、北京と上海は1:666、深センは1:714となっている。
日本の大都市のバブルが、世界のその他の大都市をはるかに下回り、利回りが投資の見どころであることが一目瞭然だ。