だが交渉が深まるにつれ、日本側は、ロシア側の要求する協力のレベルが予想以上に高いことに気付いた。日本は、都市インフラの建設など日本が得意とする分野での協力を提案しているが、ロシアは、エネルギーパイプライン建設などの大型プロジェクトに参加するか、石油・ガスの採掘に資金を提供することを望んでいる。だがロシア側が望むプロジェクトには莫大な資本がかかり、欧米の対露経済制裁のレッドラインに触れる可能性もある。日露間の意見の相違は大きく、協力の見通しも不透明となっている。
世耕経済産業大臣は「経済協力の深化によって政治関係の安定を促すことができる」と期待しているが、ロシア側の反応は冷めている。ロシアのある関係者は「経済協力によって領土交渉を進めるにはまだ時間がかかる」と語る。
共同通信の分析によると、日本は、経済を切り札として領土交渉の進展を得ようとしているが、ロシアにとっては、日本との領土問題解決は常に二の次で、経済協力の実現こそが主要目的だった。この点に変化はない。ロシア側の交渉戦術の核心は、日本からいかに多くの経済協力を引き出すかにある。
増加する交渉の変数
ロシアとの領土交渉問題では、日本は常に、米国の顔色をうかがってきた。安倍政権はこれまで、ロシアに接近して北方領土問題の解決をはかることについて、米国の理解を繰り返し求めてきた。これまでの分析によると、安倍首相がプーチン大統領の訪日日程を12月中旬に定めた重要な原因の一つは、米国の政権交替の機に乗じて、米国が必ずしも歓迎しているとは言えないこの任務を完了することにあった。
だがトランプ氏の米国大統領当選は、日露の領土交渉に新たな変数を加えている。日本国内の楽観派は、「米国は世界の警察にはならない」というトランプ氏の選挙戦での発言から、トランプ氏は日本固有の問題には干渉しない態度を取ると見ている。これによると、日露の領土紛争を含む日本の重要な外交問題は、トランプ政権期に進展すると期待できる。だがより慎重な観点によると、トランプ氏の外交手腕は未知数であり、次期大統領への同氏の当選は、日露の領土交渉に不安定要素を加えた。米国は現在も日露の接近を警戒しており、日露領土問題解決の道はまだ険しいと考えられる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年11月21日