中国の台頭を抑制するため、米国は2010年から、「アジア太平洋へのリバランス」戦略の推進を開始した。米国はとりわけ2016年以降、西太平洋と印度洋の間の海運の要衝となる南中国海の領土・領海紛争を、中国を抑制し孤立させる重要な手がかりとみなすようになった。ハーグ国際仲裁裁判所は2016年7月12日、南中国海をめぐる仲裁手続きについていわゆる「最終的な仲裁判断」を下した。米国はこれに先立ち、「レーガン」と「ステニス」の2空母を旗艦とする空母打撃群を南中国海に展開した。中国はこれに対し、3大艦隊による南中国海での合同軍事「演習」を行った。南中国海海域での中国と米国の軍事的対立はこれまでになく高まった。
中国の粘り強い軍事・外交作戦を前に、米国の空母打撃群は8月、南中国海からこっそりと引き上げ、中国と米国の南中国海における駆け引きの熱は一時的に下がった。だが米国は諦めようとはしなかった。日本やオーストラリアなどの同盟国と手を組み、フィリピンやベトナムなど南中国海の領有権主張国も仲間にし、シンガポールを引き寄せ、インドを丸め込み、中国に対する軍事的な封じ込めの強化をはかった。オバマからトランプに政権が移行したことで、米国の南中国海政策はより強硬なものとなる可能性がある。中国と米国の対立は、国際的な政局における最も突出した、最も危険な問題ともなり得る。
日本は米国と積極的に連携し、南中国海問題をあおり立て、問題への介入をはかっている。中国と米国の南中国海における軍事的対立の熱が一時的に下がった後も、日本は、「南中国海仲裁案」を利用して仲違いをけしかけ、米国による中国抑制の手先として動いた。そのねらいは、米国の海洋霸権の維持を助け、中国と紛争がある東中国海海域の圧力を軽減し、南中国海を経由する「生命線」と名付ける海上輸送ラインを確保することである。また米国と韓国は2016年7月、中国やロシアなどの国々や、韓国の民衆が強く反対していたにもかかわらず、ミサイル防衛システム「THAAD」の韓国への配備を決めた。日本と韓国は11月、「秘密軍事情報保護協定」に仮署名し、米日韓3カ国の軍事同盟における日韓の軍事関係の空白を補った。そのねらいは、米日韓軍事同盟を中心とした「アジア版NATO」を形成することだ。
中国周辺の安全情勢は2016年以降、総じてより厳しいものとなり、中国の外交は新たな形勢に直面していると言える。中国はこれに対し、対日外交における「区別」という原則を堅持し、日本国内の平和主義勢力に呼びかけ、日本が戦後一貫して歩んできた平和発展の道を堅持し、中日関係の前進を促すことに期待を持っている。例えば2016年9月、中国の指導者はG20サミットで安倍首相と会った際、「双方は障害を排除し、中日関係が早期に正常な発展軌道に戻れるよう後押しする必要がある」と指摘した。日本企業の対中投資は2016年には回復傾向を示し始めた。中国人の訪日旅行も力強い伸びを続け、中国人の日本での消費は全外国人の日本での消費の半分以上を占めるようになった。中国の一部のメディアやウェブサイトは、日本を訪れた観光客が日本での好印象をつづった文章を掲載した。こうしたすべては、両国関係の前進の表れとみなされた。
だが安倍政権は、根深い右翼的な政治理念に基づき、中国への全面的な対抗姿勢を見せるようになった。釣魚島問題では「領土問題は存在しない」との立場を頑強に貫いている。軍事的には「中国脅威論」をあおり立て、中国が釣魚島付近の海域に新設した石油掘削プラットフォームが軍事利用される可能性があると主張している。宮古海峡の両側にある島嶼の軍備を増強し、往来する中国の軍艦に脅威を与えるためのミサイルを配備した。さらに自衛隊は軍艦や偵察機をしばしば派遣して監視活動を行い、中国の石油・ガス田における作業を妨害し、宮古海峡を通過して正常な訓練を行う中国の軍艦と軍機には追跡・偵察を行っている。両国の政治関係の悪化と日本メディアに蔓延するネガティブな対中報道の結果、日本国民の中国に対する親しみは国交回復以来の最低に落ち込んだ。安倍内閣は、中日関係の前進に努める中国とは逆方向に進み、中日関係は前進どころか後退を余儀なくされた。中日両国の対立は日増しに拡大し、複雑さと重大さを高めている。