「退却による前進」は「世界一」がねらい?
戦略から言っても規模から言っても、また管理構造から言っても製品から言っても、買収したばかりの三菱自動車は、ゴーンをさらに「格上げ」したと言えるだろう。昨年5月、日産は、2370億円で三菱の34%の株式を買収することを発表した。10月20日には、三菱自動車の株式の買収を完了し、筆頭株主となったことを宣言した。
燃費不正問題に陥った三菱は、日本の消費者の信頼を失い、日本市場での売り上げで影響を被った。またブラジルやロシア、中東地区の市場での売り上げの鈍化も、三菱全体の売り上げに影響を与えた。2016年の三菱の世界販売台数は93万4千台で、前年から13%減った。
ゴーンは三菱自動車の再興だけでなく、ルノーの持続的で安定した成長という任務も負っている。2016年のルノーの世界販売台数は318万3千台で、前年から13.3%増えた。市場シェアと販売台数は各地域でいずれも高まったが、中国市場では、ルノーはなかなか成果を上げられていない。2016年のルノーの中国での自動車販売台数は3万5300台で、連合に入ったばかりの三菱にも及ばなかった。三菱の昨年の中国での販売台数は8万2700台だった。世界で最も有名な自動車メーカーの一つでありながら、世界最大の自動車市場で年間販売台数が10万台に届かないというのはいただけない。三菱とルノーの中国での売り上げを見る限り、中国市場はゴーンの悩みの種だ。
ゴーンは記者の取材に対し、ルノーの成長の持続と安定化を実現するには、ルノー内部にまだ多くのやるべきことがあると語っている。ルノーと日産、三菱の3社を同時に掌握することは、ゴーンにとって、体が一つでは足りないという状況だっただろう。日産自動車のCEOを退任した後、カルロス・ゴーンは、三菱とルノー、連合全体の発展に目を向けることとなる。ゴーンはこの変化について、「連合の運営や進化、拡張、戦略により多くの時間と労力をかけ、連合の持つ規模による競争優位性をパートナー各社に享受させることができる」と語っている。
ゴーンのこの動きは、世界トップ3の自動車企業に挑戦しようとの連合の意図をはっきりと示している。2016年、ルノー・日産連合の世界販売台数は996万1千台に達し、フォルクスワーゲンやトヨタ、ゼネラル・モーターズとの差は一段と縮まった。三菱買収後、連合全体の規模は拡大した。連合のメンバーである3社の年間販売台数を見ると、ルノーと三菱は、日産よりも大きな成長の余地を持っていると言える。さらなる前進のための退却というこの構えは、ゴーンの「世界一」に向けた野望を示している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年2月26日