日本の多くの大企業が春の賃上げを発表したが、その多くがこの4年間で最低の伸び率となった。ロイター通信によると、トヨタの中クラスの技術者の場合は月給36万円で、0.36%という伸び率では毎月1300円弱しか増えず、トヨタ本社に近い名古屋市の名物「味噌カツ丼」1杯分にしかならないという。
日本の安倍晋三首相が景気刺激策を開始してから3年以上になるが、これがもたらした「福利」が毎月1杯のカツ丼とは、アベノミクスにとってこれ以上恥ずべきことはあるだろうか?答えはイエスだ。
カツ丼で経済政策の不調を味わう
1杯のカツ丼はアベノミクスの難航、経済見通しに対する企業の懸念を反映している。
日本企業による今回の賃上げは、春闘の結果だ。アベノミクスが始まり、賃上げによる消費促進が奨励されると、春闘の政府の色合いが濃くなった。安倍首相が音頭を取る賃上げ要求は、「官製春闘」とも呼ばれている。
官製春闘はどの程度の戦績を収めているのだろうか。フィナンシャル・タイムズは「日本の大企業の賃上げ幅は昨年を下回り、日本の分裂した労働市場を反映し、アベノミクスの目標を打ち砕いた。安倍首相は企業に対して、賃上げ幅を少なくとも2016年と同水準にするよう呼びかけていたが、失望を深めているようだ」と報じた。
もう一度データを見てみよう。日本トップの自動車メーカーのトヨタでは、社員の基本給の伸び幅が1300円で、昨年を200円下回った。日産は1500円で、昨年の半分のみ。家電メーカーの大手であるパナソニック、NEC、富士通、日立、三菱電機は1000円で、いずれも昨年を500円下回っている。
上海国際問題研究院諮問委員会の呉寄南副主任は「日本の大企業には、賃上げの資金がないわけではない。円安が続き、輸出商品の競争力が高まり、株価が高騰し、求人倍率も上昇している。大企業の経営状況は好転しており、約200兆円という巨額の資金を保有している。しかしこれらの資金を生産拡大にも投資にも用いず、社員に分配もしていない。これは企業が、経済情勢が不明瞭と判断し、自信を失っているからだ」と指摘した。
上海対外経貿大学日本経済研究センター長の陳子雷氏は「賃上げの伸び率の低下は、日本が今年物価目標を実現することへの不信感、収益増への悲観的な考えを反映している。日本経済は今後より厳しくなり、国民生活の負担が拡大しそうだ。昨年は円安と株価の高騰、米国経済の景況感の回復により、日本経済がやや好転した。しかし今年もこの流れを維持するのは難しく、米国経済の回復の程度、日本の対中輸出状況にかかっている。金融政策について、米国は日本の緩和策に圧力をかけている。財政政策を見ると、国内総生産(GDP)に対する赤字の割合が高くなっており、大規模な刺激策の実施は不可能だ。マクロ経済のファンダメンタルズ、企業自身の収益の予想、それからアベノミクスの実施効果への懸念から、企業は自ら判断を下している」と分析した。
世界銀行もこのほど、アベノミクスが転換点を迎えており、改善の切実な需要があると判断した。金融政策について、2013年から始まる異次元の金融緩和策の効果が、すでに失われ始めている。リスク回避通貨としての円の位置づけが再び強まり、昨年の大半の期間に渡り受動的な円高が発生し、アベノミクスの最大の成果のほとんどが失われた。財政政策について、安倍首相は総額28兆円規模の経済刺激策を打ち出し、日本の負債をさらに拡大させた。上述した「2本の矢」と比べると、構造改革という「3本目の矢」こそが、最も困難な課題だ。例を挙げると、労働生産性が低いサービス業は、日本の労働人口が唯一増加している産業であるが、対外開放の規制が最も厳しい分野でもある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年3月20日