ハギリアン教授によると、皆が残業を迫られる原因の一つは労働力不足にある。「日本人の労働時間がこれほど長いのには現実的な原因がある。(中略)仕事ができる人が足りないのだ」とハギリアン教授は語る。「人手の足りない会社では、自分だけ帰ろうというわけにはいかない。業務を終えるのに十分な人がいないのだ」
だが日本の高強度の仕事文化は大きな危険をはらんでおり、政府も行動を迫られている。仕事に一生懸命な余りに一連の死亡事件も起きており、日本人の過度の仕事ぶりには再び関心が高まっている。日本人はこのような現象を「過労死」と呼ぶ。
広告会社に勤めていた24歳の高橋まつりさんが2015年のクリスマスに飛び降り自殺をしたことは巨大な反響を呼んだ。高橋さんは月に残業100時間以上という苛酷な勤務状況にあり、死の直前に母に遺したメッセージには、「人生も仕事も全てがつらい」と書かれていた。
高橋さんのように過度の仕事が原因で死亡または自殺した日本人はこの年、2159人にのぼった。昨年10月、日本政府が発表した報告書によると、毎月の残業時間が80時間を超える社員がいる会社は、日本の会社の4分の1に達する。このような苛酷な仕事状況では、「過労死」する社員がいつ出てきてもおかしくないと日本政府は考えている。
こうした状况に対応するため、日本の安倍晋三首相は、日本人の仕事圧力を軽減しようと各種の方式を探っている。2月から始まった「プレミアム・フライデー」に社員を参加させようという活動もその一つだ。
だが「プレミアム・フライデー」の実施から2カ月経っても、これに参加しようとする企業は少なかった。3月の「プレミアム・フライデー」は、現地の人びとや旅行客らが公園や寺での花見に興じる桜の季節に当たった。だがこの日は日本の会計年度の最後の日に重なったため、多くの会社は異常な忙しさで、社員を早目に帰らせるなどとてもできない状況だった。
誰も先には退勤せず
同僚がいる限り会社に残るという社会的圧力があるために、人びとは夜遅くなるまでなかなか退勤できない。「プレミアム・フライデー」のような奨励措置を取っても、このような現状を変えるのは難しい。