130年の輝かしい歴史を誇り、戦争や不景気という試練をも乗り越えてきた日本最大の新聞社「日本新報」は、インターネット時代である今、発行部数も売り上げも激減し、広告収入も低迷するなど、新聞社として経営を続けるのが難しくなり、未曽有の危機に直面する。そこで、同新聞社の社長は、身売りという驚きの決断をする。その交渉相手は、外資系の大手ネット通販会社だ。(文:林蔚。中国青年報掲載)
WOWOWで4月30日から放送が始まったドラマ「社長室の冬」では第1話から、商業界の仁義なき戦いが繰り広げられ、伝統メディアが時代の渦のなかで迫られる難しい決断を描いている。
身売りの交渉相手であるネット通販会社・AMCジャパンの青井社長は、豊富な資金力を持つ暴君で、ニュースに対する強い信念も抱いており、「紙の新聞の発行は全面廃止」、「新報のブランドは残し、全面的にニュースサイトに移行する」という、「日本新報」にとっては非常に厳しい買収条件を突きつける。つまり、印刷や配送などの巨大なシステムが停止するということで、大規模リストラは避けれないということだ。
「新報」は交渉相手からプレッシャーをかけられ、自社の労働組合からも抗議を受け、新聞社の創始者一族からも圧力を受けるほか、政界からも強い反対を受ける。
政治勢力の代表である三池代議士は、「新聞はまだまだ利用価値があり、上手に利用すれば情報も止められる。こちらに有利な記事を書かせることも難しくはない。しかし、ネットは情報の海。スキャンダルが一度出れば回収することは不可能。だから身売り話は潰さないといけない。マスコミのご意見を神妙に聞いているふりさえしておけば、やつらの政権批判は弱まる。権力にコミットしているという雰囲気は、奴らを油断させる」と、身売り阻止に向けて動く。このずる賢い政治家は新聞社を操り、メディアを利用したいのだ。
各方面からの圧力を受け、「新報」は身動きできない状態に陥る。「社長室の冬」を見ると、2012年から14年まで放送された米人気ドラマ「ニュースルーム」を思い出す。しかし、前者は、日本のメディア業界の実態や伝統メディアがインターネットの逆風をもろに受け苦境に陥る状況などを赤裸裸に描いており、業界関係者からは「その通り!」との声が上がるなど、議論を巻き起こしている。
広く知られているように、日本は世界最大の新聞王国だ。日本は小さな島国であるにもかかわらず、新聞の購読者は世界最多で、「読売新聞」や「朝日新聞」などの発行部数が世界一に立ったこともある。
しかし、今はインターネット時代で、「ネット、スマホが登場し、いつのまにか人々は紙の新聞ではなく画面でニュースを見るようになった。ニュースはどんどん転載され、時間に関係なく、人々の間を駆け巡る。もはや人々は情報を得るために朝の新聞を待つことはない」。「社長室の冬」のオープニングで流れるこの言葉は、伝統メディアの苦悩を見事に言い表している。
日本新聞協会の2016年の統計によると、00年から16年まで、日本の新聞の発行部数は右肩下がりとなっている。例えば、一般紙は、00年の4740万部から、16年には4000万部以下に減少している。「社長室の冬」では、「日本新報」は4年で発行部数が100万部減るなど、新聞大手の読売や朝日の現状を描いているかのようだ。