国内の批判を和らげる
日本がこうすることには、次の原因がある。まず国際社会に自国は自由貿易の毅然たる擁護者であると標榜し、国際貿易秩序の構築においてリーダーシップを発揮する。日本の安倍晋三首相は昨年12月、参議院本会議でTPPを批准する前に、「TPP発効の見通しは不明瞭だが、公平な経済圏を構築する戦略と経済的意義を世界に伝える意義は重大だ」と述べた。日本が国際貿易秩序の構築において、リーダーシップを発揮するという野心を示した。
次にTPP「復活」により、トランプ政権が日本に対して切った経済のカードに対抗する。「米国ファースト」を掲げるトランプ大統領は就任後、日本が安保で便乗していると批判し、さらには批判の矛先を米日間に存在する巨額の貿易赤字問題に向けた。二国間貿易協定を締結することで、両国の貿易不均衡の問題を覆すよう迫った。日米間ではすでに両国の「ナンバー2」である、ペンス氏と麻生太郎氏による貿易問題の対話枠組みが構築されていた。正式に交渉を始める前に、日本はまず日欧経済連携協定(EPA)を締結し、さらにTPP参加11カ国を「復活」の会合に招いた。これは間もなく始まる日米「貿易戦」の弾薬を集めるためだ。
それから、中国の地域における影響力を相殺する、TPPの「残された価値」を発揮する。TPPは当初、米日がアジア太平洋の経済秩序を把握し、中国経済の台頭をけん制するための手段とされていた。TPP失敗後、日本は別の重要な地域貿易枠組みであるRCEP(地域包括的経済連携)の交渉において、各国の国情の大きな差を完全に無視しTPPばかりを持ち出し、TPPを基準とするRCEPの構築を求めた。これはRCEPの交渉、アジア経済融合を大幅に遅らせた。
最後に、TPPの失敗は安倍政権の経済・外交政策に大きな衝撃をもたらした。安倍首相はTPP「復活」により批判から逃れようとしている。2013年にTPP交渉参加を正式発表し、2016年12月に国会でTPPを正式に批准するまで、安倍政権はTPP問題で大量の外交・政治資源を費やした。米国のTPP離脱により、安倍政権のすべての支出が無駄になった。この状況下、日本国内では安倍首相の戦略的な予測力を疑う声が上がった。安倍政権のTPP「復活」が失敗したとしても、国内の批判を和らげることはできる。
11カ国の意見に大きな食い違い