次に、改憲行程が影響を受ける。支持率低下は安倍首相の右傾化政治理念に衝撃をもたらす。安倍首相は改憲の姿勢を崩していないが、実際には改憲のキーワードを「改」から「加」に、すなわち「加憲」に変えた。安倍首相は今の世代で、自衛隊は違憲かという長年に渡る議論に終止符を打つとした。
手続きを見ると、「加憲」にも改憲の規定が適用される。つまり国会議員全体の3分の2の賛成を得てから動議を出し、国民投票に移るということだ。今回の東京都議選の失敗により、安倍首相は党内から批判を浴びている。短期間内に党内で威信を取り戻すことが出来なければ、改憲に反対だった自民党議員が公然と批判することになる。さらに護憲派の公明党が反対すれば、年末に自民党改憲案を国会に提出したとしても、来年上半期に改憲の動議を出す際に3分の2の支持を失い、下半期に国民投票を実施する計画も実現困難になるだろう。
それから、日本の対外関係が試練を迎える。日本国内の政局が今後どのように変化するにせよ、対外関係で次の問題に直面することになる。米国のTPP離脱は安倍首相に大きな衝撃をもたらした。日米同盟の基盤が揺らぐことはないが、トランプ政権のアジア太平洋戦略が不明瞭ななか、オバマ政権の「アジア太平洋リバランス」に追随してきた安倍首相は、態勢を整えがたい。安倍首相は昨年末、ロシアのプーチン大統領を日本に招待し、南クリル諸島(日本名・北方四島)の「共同経済活動」を提案した。しかし日露関係の改善には、現在も続報がもたらされていない。日露関係の改善は緩慢であり、時おり不協和音を発している。
日米・日露関係が停滞するなか、政治の危機を迎えた安倍首相にとって、外交の唯一の成果は中日関係の改善で得るしかない。苦境に陥った安倍首相が再び「中国脅威論」のカードを切ることが予想されているが、そうなった場合、中日関係の悪化が続けば日本の国益が損なわれると有権者が考えれば、安倍政権の崩壊の時期が早まるだけだ。そのため安倍首相の理性的な選択肢は、中日国交正常化45周年と平和友好条約締結40周年を機に関係改善に取り組み、来年上半期・下半期に両国首脳の相互訪問を実現し、地域の平和と安定に貢献し、外交のポイントを稼ぐことかもしれない。(筆者:廉徳瑰 上海外国語大学日本文化経済学院教授、博士生指導員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年7月19日