▽抗日戦争をミクロな視点から考える
江さんがこれらの史料を研究する際に、日本軍の死亡者数を少なめにすることで、日本軍による虐殺の真相を隠し、中国軍の抗日戦争の成果を否定する史料も存在していることに気づいた。
靖国神社が提供する戦没リストを記載している『第47師団史』という本では、第47師団の403人が戦没したとされているが、『弾部隊戦記』という本にある日本軍の兵士が整理して保存したリストによると、第47師団の131連隊だけで625人が戦死した。江さんは、「連隊の死亡者数が師団よりも多いため、靖国神社のデータが明らかに捏造したものだと見られる」としている。
一方、中国軍人が抗日戦争に現れた勇ましい姿に、日本軍さえも感服したという資料もある。『南京作戦の真相―熊本第六師団戦記』には、日本軍は南京戦役後に戦没した中国軍人のために墓碑を立て、さらに、坂井徳太郎が、「敵ではあったが、祖国を守るために戦没した人を尊敬すべきだ」と語ったと記されている。
劉嘉氏は、これまでの抗戦史料では連隊に関するものが不足していたが、江さんが収集した史料は抗日戦争をミクロな視点から考えることを可能にしたと語った。
▽抗日戦争に参加した中国軍人の勇ましさを覚えてもらいたい
2015年、当時21歳だった江さんは友達の呉さんと共に、南京防衛戦に関する本を完成させたが、結局50社ほどの出版社に断られた。ネットユーザーは、「書いた以上は、ほかの中国人に伝えるべきだ。断られても何の損もない。出版される日が必ず来る」と彼らに励ましのコメントを寄せた。
その後、五ヶ月を経て、32万字の「中国を侵略した日本第6師団の南京戦役及びその暴行に関する実録」が出版された。多くの民間の抗戦史研究者と接触した経験のある劉嘉氏が、この本に隠れた価値を見出した。それは、日本軍の戦争史料を用いて、南京大虐殺への日本右翼勢力の否定を反撃することが、非常に説得力があるということだ。
現在、淞滬会戦と百団大戦の歴史に関して最も全面的に研究された本を出版し、中国人に中国軍人の勇ましい姿を覚えてもらうという大きな夢を抱いている江さん(23)は、数ヶ月後、「南京防衛戦全史」を出版する予定だ。これで彼は夢に向かって一歩近づくことができたといえる。(編集HQ)
「人民網日本語版」2017年9月20日