このほど、『中国抗日ドラマ読本: 意図せざる反日・愛国コメディ』という本が日本で人気沸騰中だ。本書は『抗日奇侠』『孤島飛鷹』『覚醒者』など中国の「神劇」21作品(計678話・3万180分)をまとめている。ドラマのあらすじ、人物相関図、一部シーンへのツッコミなどが含まれる。中国の映像作品で旧日本兵を30回以上も演じたことのある美濃輪泰史氏は「間違いはよくある。彼らは日本人の顔が欲しいだけだ」と感慨深く語った。
ジャッキー・チェンに魅了され香港に渡る
美濃輪氏は幼い頃から成龍(ジャッキー・チェン)のファンで、「大きくなったら香港に行こう」と志を立てた。高校を卒業するとジャパンアクションクラブに入りアクションを学び、アルバイトで貯めたお金を使い2006年に香港に渡った。当時の美濃輪氏は人脈がなく、言葉も通じなかったため、スタントマンになり道具運びをした。その後「香港にチャンスは残されていない、大陸に行くべきだ」と聞き、心が動かされた。
美濃輪氏は2009年に北上した。チャンスは確かに少なかったが、さまざまな抗日ドラマと切っても切れない縁を結んだ。『戦火中青春2』『先鋒1931』『光栄大地』『那年来了鬼子兵』など30以上の映像作品で、美濃輪氏は例外なく日本兵を演じた。
台詞は適当、「帰ったほうがましだ」
「鬼子」を演じるのは、想像するほど簡単ではなく、恐ろしい形相をし、刀を振り回し、「バガヤロウ」と叫べばいいわけではない。当時の歴史に関する知識や、旧日本軍の服装、姿勢、話し方などを深く研究しなければならない。筆者の岩田宇伯氏は『中国抗日ドラマ読本』の中で、「ある日本人は襟を逆に立て、和服を死に装束のように着ている。ある日本の軍官は明治維新前のちょんまげを結っている。時代は1937年の設定なのに、侵入者に警戒する赤外線レーザー、生体認証などのハイテクが次々と登場する」とツッコミを入れている。美濃輪氏の携帯電話にも、数枚の「機密文書」が保存されている。美濃輪氏は環球時報の記者に、「これは文章になっていない。百度で翻訳されたものだ」と述べた。
技術的な問題であればまだ理解できるが、いい加減な態度を美濃輪はどうしても受け入れることができない。美濃輪はある日監督から「いかにも悪人らしい動きと表情」を求められた。台詞は「適当で構わん」「どうせ後から吹き替えが入るんだ。一、二、三、四と叫んでもいい」という。美濃輪氏はこれに憤り、「私は演技をしに来た。数字を読ませようなんて、帰ったほうがましだ」と言った。「神劇」のスタッフは日本人俳優とのコミュニケーションを好まず、美濃輪氏がミスを指摘しても修正しようとしない。「彼らは日本人の顔が欲しいだけだ」