東京電力福島第1原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水に、他の放射性物質が除去しきれないまま残留していることが分かった。一部の測定結果は排水の法令基準値を上回っており、放射性物質の量が半分になる半減期が約1570万年の長寿命のものも含まれている。共同通信が伝えた。
東電は、2017年度のALPS(多核種除去設備)使用後の測定結果によると、半減期が約1570万年のヨウ素129の放射能濃度は1リットルあたり最大62.2ベクレルで、法定基準値の9ベクレルを上回っていると発表した。アナリストは、この測定結果は放射能汚染水の処理作業に新たな不確実性をもたらしたと判断した。
トリチウム水からトリチウムを除去するのは非常に困難だ。地下水が建屋に流入したため、放射能濃度の高い汚染水が増えているが、原発内には処理水を保管するタンクを増設するスペースがほとんど残されていない。これらの汚染水をいかに処理するかは、東電と日本政府にとって大きな課題となる。
トリチウム水の処理方法について、日本政府のタスクフォースは海洋放出、地層注入などの5つのプランを立てた。専門家は、海洋放出と大気放出は社会への持続的な影響が少なく、合理的な処理方法とした。日本政府は2016年6月の報告書の中で、薄めて海に放出する方法は短期間内に、比較的低予算で処理できるとした。報告書は、海洋放出は原発のトリチウム水処理の一般的な方法とした。この処理方法でトリチウム水が海で薄まれば、残留放射性物質も基準値以下まで薄まるという意見もあった。
ところが福島県の漁師らが、風評被害を恐れて強い懸念を示しており、海洋放出の実施が難しくなっている。福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は、トリチウム水の海洋放出に断固反対を表した。福島県の漁獲量は現在、震災前の2割のみで、消費者の15%が依然として福島県産の水産物を断固拒否している。これほど厳しい状況下、トリチウムを含む処理水を海に放出すれば、福島県の漁業は再び壊滅的な被害を受けるというのだ。
東京大学の関谷直客員准教授は「福島県の漁業は、農業は観光業のように復興していない。処理水を海に放出すれば、安全性だけではなく、さらに経済への影響を考慮するべきだ」と述べた。日本の市民団体「原子力市民委員会」は今年3月に福島県に提出した報告書の中で、汚染水の放射能濃度が1‰以下になるのは123年後であり、長期的に保管してから海に流すことを検討すべきとした。
日本政府は今月末に国民の意見を聞く公聴会を開くが、トリチウム以外の放射性物質の存在についてはほとんど議論されていない。浄化後の汚染水にその他の放射性物質が含まれることが発覚し、困難が山積していた福島の汚染水処理に新たな問題が浮上した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年8月22日