エレベーターで宇宙に行く。これはSF小説のシーンのようだが、日本の科学者はこれを実現しようと取り組んでいる。日本は今月、小型版宇宙エレベーターの実験を行う。宇宙におけるエレベーターの運動を実験するのは今回が初。日本の科学研究チームは2050年に宇宙エレベーターを作り、乗客を3万6000メートルの高空に送り届ける目標を立てている。
ケーブルで地上と宇宙を結ぶ
毎日新聞の記事によると、静岡大学工学部の科学研究チームと日本の建設会社・大林組が小型版宇宙エレベーターを開発しており、気象状況に基づき今月中に実験を行う予定だ。研究開発を担当する静岡大学の能見公博教授によると、実験では静岡大工学部が開発した超小型衛星2基を使う。 一辺10センチの立方体型で、長さ約10メートルのスチール製ケーブルで2基をつなぐ。この2基はH2Bロケット7号機により、鹿児島県の種子島宇宙センターから国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げられる。研究者はモーター駆動のエレベータールームを想定した箱を使い、ケーブル上を移動させる。衛星に取り付けられたカメラが、箱が実際の宇宙空間内でどのように移動するかを記録し、宇宙エレベーター模型の実現性を検証する。静岡大学の研究開発チームによると、小型版ではあるが宇宙空間で運行状況が確認されれば、構想の実現に向けた一歩目になると表明した。
大林組は単独で開発作業を進めている。大林組のウェブサイトによると、彼らはカーボンナノチューブでケーブルを作り、エレベーターをモーターで移動させる。エレベーターは直径7.2メートルの卵型で、定員30人。地上を出発し、8日で宇宙ステーションに到着する。同社は、この宇宙エレベーターの開発には約20年、約10兆円が必要と見込んでいる。大林組の宇宙エレベーター開発担当者の石川洋二氏は、朝日新聞のインタビューに応じた際に「宇宙エレベーターは理論上、実現可能だ。未来は宇宙旅行が流行するだろう」と話した。
宇宙エレベーター、宇宙の輸送コストを大幅削減
宇宙エレベーターの構想は、ロシア人科学者のコンスタンチン・ツィオルコフスキーが1895年に打ち出した。彼は地球静止軌道に宇宙の城を建設し、1本のケーブルで地上と結ぶことで宇宙の輸送を実現することを提案した。英国人作家のアーサー・クラークは1979年に、この概念をSF小説『楽園の泉』に記し、多くの人から注目された。中国のSF作家である劉慈欣の作品『三体』にも、宇宙エレベーターに関する記述がある。その基本的な原理はこうだ。長いケーブルを使い、その一端を地球上に固定し、もう一端を地球静止軌道(高度3万6000メートル)を飛行する宇宙船もしくは宇宙ステーションに固定する。重力と向心加速度の相互作用によりケーブルが引き締まり、エレベーターに似た昇降機がケーブルを上下に運動する。
今世紀初頭、新材料の登場により、宇宙エレベーターの構想がそれほど遠いものではなくなった。開発に成功すれば宇宙の輸送コストを大幅に削減できるため、米国、日本、ロシアなど各国の科学者が模索を開始した。日本は最も積極的な国の一つで、10年前に各業界の専門家で作る「宇宙エレベーター協会」を発足し、研究を展開した。青木義男教授は2013年、クライマーと呼ばれるエレベーターを使い富士山麓で実験を行った。エレーベーターは地上から1200メートルまで上がった。しかし日本の法律の制限があり、より高い高度の実験は行えなかった。宇宙エレベーター協会の大野修一会長は、宇宙エレベーターは人類の宇宙資源探査に必要な道具になると判断した。