日韓関係が再び危機に陥っている。その起因となったのは、韓国の裁判所が日本企業に対して、第二次大戦中の韓国人徴用工に賠償金支払いを命じる判決を下したことだ。日本政府はこれに強い不満を示した。このほど韓国の議長は日本の天皇に対して、慰安婦問題についての謝罪を求め、再び日本側を刺激した。日韓に共通する同盟国である米国は今回、両国関係の緊張を気にかけず、仲裁の手を差し伸べようとしないのだろうか。これについては、トランプ政権の風変わりな行為から見ていく必要があるだろう。
トランプ氏は大統領に就任後、同盟関係を明らかに軽視している。同盟国に対して費用の負担拡大を求めており、同盟国との関係を強化するため効果的な措置を講じることも稀だ。これはトランプ氏本人の経営者らしい考え方と関連しているかもしれない。大きな実力を持つ経営者にとって、二国間交流は実力差を利用し相手側に圧力をかけ、譲歩を迫る上で最も有利と言える。多国間メカニズムの複雑な関係による干渉やけん制を受ける必要はない。トランプ氏は同盟意識が弱く、頻繁に同盟国をやり玉に挙げている。対外制裁や貿易戦争の発動においても、同盟国に協力を呼びかけることは少ない。これは詰まるところ、トランプ氏が同盟関係を一種の負担と見ているためであり、「再び偉大になる」米国は同盟国の協力を必要としないからだ。
戦略的な見地から見ると、トランプ政権には長期的かつ確かなアジア太平洋戦略・計画がない。トランプ政権が打ち出した「インド太平洋戦略」は、前任者の「アジア太平洋リバランス」を踏襲するつもりはないことを示しており、その重点も遠いインドを抱き込みより大きな対中包囲網を形成することにある。日韓はその中で立ち位置を見つけられない。トランプ氏が就任すると、北東アジアの注目の重点は朝鮮に移った。日韓はトランプ氏の碁盤上で、必要な時に掛け声に応じ支援に駆けつける付き人に過ぎない。トランプ氏は相手国の気持ちを考えたがらず、他人のために配慮することなどない。
グローバル主義と理想主義を持つオバマ政権と異なり、「米国ファースト」を掲げるトランプ政権は目先の利益を極めて重視する。確かな利益と直接関係しない議題についてはまったく興味がなく、ましてや米国の長期的に「貸し越し」している国際的な影響力により他国の係争を仲裁しようと思わない。トランプ氏にとって、直ちに確かな見返りが得られなければ、ビジネスが成立しないからだ。トランプ政権は現在も日韓の衝突に関わろうとしていないが、これも利益を手にできないと感じているからだ。
しかし現在の日韓の対抗はコントロールを失う兆しを見せている。特に第2回米朝首脳会談が近づくなか、米国は統一戦線に亀裂が生じていることをこれ以上無視できなくなった。そのため超党派国会議員が、両国の係争を解消するため自ら仲裁役を買って出た。トランプ政権は内部から圧力をかけ、日韓に怒りを抑え、大局を重視し刀を収めるよう求めるだろう。しかし日韓は歴史の深い恨みを持ち、国民感情の対立が深刻であり、外部からの力ではこれを根本的に覆すことが困難だ。さらにトランプ政権は目先のことばかりを重視し、同盟国を説得する能力もなければ興味もない。そのため長期的に見ると、日韓は自ら問題を解消しなければならない。(筆者・劉衛東 中国社会科学院米国研究所研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年2月26日