トランプ氏は対日貿易赤字を問題視し、最大の原因は日本車の輸出にあるとし、輸出量の制限を求めている。強硬な姿勢を貫き、自動車への高額関税を交渉の駒にしようとしている。
農産物市場の開放について、米国側は牛肉や豚肉などの対日輸出の低迷に対して強い危機感を抱いている。米国が重視する牛肉、豚肉、小麦、乳製品などの商品について、日本に関税撤廃もしくはTPPと同等の水準を求める可能性がある。安倍政権が農業団体などの強い反対を顧みずTPP交渉への参加を決定したことから、日本は米国からのこの要求を受け入れるとみられる。市場開放の激流は引き続き農業分野に押し寄せることになる。日本国内の農家の利益が損なわれる。
米通商代表部(USTR)は昨年10月に議会に対して、日本と貿易協定締結を目指す交渉を開始すると報告していた。12月には聴聞会を開き業界の意見を集めた。牛肉や豚肉などを取り扱う農業団体は、協定の早期締結を求めた。USTRのライトハイザー代表は今年2月27日に下院の聴聞会にて、日米の新たな貿易交渉の初会合の開催を急ぐと表明した。USTRは3月1日に議会に貿易政策年間報告書を提出した。報告書は米国と日本の貿易交渉について言及し、農畜産物などの関税引き下げを求めることで貿易赤字を削減し、「公平でバランスの取れた貿易協定の実現を目指す」とした。
米国での従業員の雇用拡大を求めるトランプ政権からの要請を受け、トヨタ自動車は3月14日、2021年までの5年間の対米投資総額を約130億ドルに引き上げ、2017年に発表した100億ドルから3割拡大すると表明した。日本側は投資拡大により米国経済への貢献を強調し、米国側の態度を軟化させようとしている。
戦後の自由貿易により経済発展を実現した日本はまず、アジア太平洋で自由経済区を拡大する必要がある。米国が日本に貿易の棍棒を振るう一方で、中日の経済貿易協力は非常に活気を帯びている。第3国市場における協力も推進中だ。中米という2強の局面において、米国の貿易圧力は日本にとって「針のむしろ」であり、危機感を受け中日貿易協力を促進することになる。これはまた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への加入、「一帯一路」の建設への条件付きの参加を強く促す。
日米間で複雑かつ激しい関税をめぐる協議が展開され、米日貿易交渉が持久戦を展開することが容易に予想できる。対米貿易交渉は残された課題として日本を苦しめ続ける。(筆者・李家成 遼寧大学北東アジア研究院研究員、察哈爾学会研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年4月22日