現状を見ると、東アジアの秩序構築において日本が切り出せるカードは少なく、安倍政権のポイント稼ぎの見どころになるのは中国との関係改善だ。日本と東アジアの隣国の関係は期待されておらず、対中関係の改善は大きな連鎖効果を生むかもしれない。青書の文言を見ると、近年の中日関係改善の全体的な流れを見ることができる。今年の青書は、「大局的に見ると、中国との安定的な関係の構築は非常に重要だ」としている。これは中日関係の改善が中日関係のみならず、日本の外交戦略を支えるという大局を示している。昨年に両国首脳の相互訪問が実現し、中日関係が正常な軌道に戻ったことから、今年はさらに中日関係を引き続き深化・発展させなければならない。
当然ながら、これは中日関係に何の問題もないというわけではない。両国関係の構造的な問題が適切に解消されておらず、東中国海・南中国海問題に対する日本の批判にも止まる様子は見られない。少なくとも青書の中からは、日本政府の中国に対する固有の敵意を読み取れる。安倍氏は善意を示すことで中国との関係を改善したが、安倍氏本人は同盟国の米国や欧州の間を走り回っている。現在の中米による戦略的競争を背景としながら、いかに安全や経済の利益などをめぐり中国や米国との関係のバランスを図るかは、依然として中心的な外交の課題だ。
日本が一方的に中国の核心的利益を脅かさなければ、中日関係が引き続き安定的に発展することは間違いない。今年は日本の改元年で、新時代に突入する。G20サミットが6月下旬に大阪で開催される。安倍氏は昨年正式に訪中した際に、中国の指導者に訪日を要請した。また日本国内では参院選を控えており、さらには衆院選が実施される可能性もある。現在の日本の外交にとっては、安定が最重視される。中日関係が流れに乗り、安定しつつ前進できるか要注目だ。(筆者・王広涛 復旦大学日本研究センター副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年4月25日