30年後、ほぼ同じ人、同じ観念、同じ筋書きが再演された。ただし主人公は日本から中国に変わった。これは中米貿易戦争の時代的背景だ。当然ながら中国は日本のコピーではなく、高度複合型のライバルだ。中米間の競争の広さと深さは日米経済戦争を大きく上回り、体力と知恵が試される持久戦になっている。
まず、中国側の立場は鮮明だ。中米間の貿易協議は相互尊重・平等・互恵の上に成り立つべきであり、我慢の限界を探ったりこれを超えてはならない。日米経済協議の日本側の代表者だった当時の宮沢喜一大蔵大臣は、ジム・ベーカー財務長官にペコペコ頭を下げた。日本は協議で米国の言いなりになった。
次に、中米貿易摩擦の裏側には構造問題がある。関税戦争は始まりに過ぎず、今後は中米両国の経済発展能力によって決まる。中米の経済発展の格差が縮小し、両国はいずれも10兆ドルクラスの大型経済体になった。これは世界経済の歴史にない現象だ。キッシンジャーが述べたように、中米関係は過去に戻れなくなった。日米経済戦争において、米国は日本という軍事同盟に対してまったく手を緩めなかった。これは市場経済体制における政治的強制でもある。
それから、日本と比べるとドイツは米国との経済戦争の圧力に上手く対処した。これはドイツが欧州一体化に依存し、特に通貨協力により自身の金融の実力を形成したことが重要な理由になっている。日本の輸出立国モデルは1980年代に臨界点に達し、製造業輸出大国から資産大国にモデルチェンジした。金融の重要性が増していったが、日本の金融システムは国家経済戦略の変化に伴う改革に順応しなかった。中国は昨年、第1回国際輸入博覧会を開催し、輸出国から輸出入のバランスが取れた国へとモデルチェンジした。中国市場の拡大により必然的に人民元の流通範囲が拡大する。貿易国から金融国へのモデルチェンジが始まった。
また、経済戦争の中心は産業の競争だ。特にグローバル化は非常に緊密な産業チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンを形成した。日本の半導体産業は日米経済戦争の犠牲者だ。米シリコンバレーの戦略専門家のRichard J.Elkus Jr.は、半導体産業は撤退後に再加入しがたい業界だと述べている。ある強国の経済体制は生態系と同じく、全体が各部分の総和をはるかに上回る。米国のファーウェイ締め出しの中軸は、中国ハイテク産業の発展の阻止にある。これは産業が大国の命脈だからだ。米国は中国の新興産業の発展を阻止しようとしているが、中国はこれを恐れず、対応する能力も持っている。
経済戦争は陣地争いではなく、双方の殺し合いでもなく、硝煙なき駆け引きだ。中国が何度も強調しているように、協力は中米にとって唯一の正しい選択肢だ。中米両国の発展は自国民の幸福に、そして世界経済の安定に関わる。(筆者・孫興傑 吉林大学公共外交学院副院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年6月10日