ここから、ASEANが打ち出すこの「インド太平洋」戦略は米日などの国と異なるとわかる。
まず、主導者がある大国または大国の集団ではなく、平和、自由、中立を遂行するASEANである。ASEANの東アジア地区協力における地位は人々の心に浸透し、地区の安定と発展に多大な貢献をしている。また、自然地理を見ても地縁的政治を見ても、太平洋とインド洋が交わる地点にあるASEAN諸国は最大の発言権を持つ「インド太平洋」戦略の制定者である。千里離れた、さらに遠い海を隔てたそれらの大国と比べて、ASEANの「インド太平洋」戦略は同地区の実情と利益ニーズと最も合致している。
次に、目的は主導権と支配権を争うことではなく、対話と協力を促進することである。ASEANがその中心的地位と主導メカニズムを強調するのは、過去の成功の経験を鑑み、周辺の大国に対話協力のプラットーフォーム、包容的な話し合いの場を提供するためである。一部の大国の「インド太平洋」戦略は主導権と支配権を握るためで、メカニズムに強烈な排他性がある。
さらに、重点分野は政治と安全ではなく、社会と経済の発展である。米日の「自由に開放されたインド太平洋戦略」にしても、米日印豪のインド太平洋での「4国連盟」にしても、政治と軍事の色合いが極めて濃厚である。一方、ASEANの「インド太平洋展望」が打ち出す4大協力分野は社会・経済面に完全に着目し、発展途上国が大多数を占めるアジア太平洋とインド洋地区にとってどちらが適しているかは言うまでもない。
「インド太平洋」概念に間違いはなく、「インド太平洋」戦略は唱えてよいが、出発点と目的は地区の平和と発展であるべきである。この点から、ASEANのこの新文書はこれまでの「インド太平洋」の中で最も「インド太平洋」と言える。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年6月29日