今後5−10年間の世界経済情勢について、学術界及び一般人の間では悲観ムードが漂っている。世界経済がいつ衰退に陥るかについても、熱心に議論されている。しかし現在の世界政治・経済情勢に基づき客観的に分析・判断した筆者は、世界経済の最も危険な時が過ぎ去ろうとしており、世界経済が来年衰退に陥ることはないと判断している。
世界経済は低成長時代を迎えるが、これは言うまでもないことだ。先進国は現在「日本化」、すなわちデフレ、低金利、低成長に陥っている。解決策も日本にならった「マイナス金利」だ。欧州はすでにマイナス金利化しており、米国もマイナス金利時代に向かっている。発展途上国の成長も勢いを失っており、ラテンアメリカ諸国ではドミノ倒しのように問題が生じ、「中所得の罠」が再来している。経済成長の重要エンジンの一つであるアジア諸国では内向き志向が強まり、投資と消費が経済成長の主な動力になっている。高成長も維持しがたく、経済成長率が6%以下に落ち込む可能性がある。先進国の経済成長率は今後一定期間に渡り2%前後で推移し、発展途上国は全体的に4%前後に戻る。世界経済は全体的に3−3.5%のやや低い成長率になる可能性が高い。また債務危機、世界の労働生産性の低下、高齢化などの構造問題により、今後10年の世界経済を楽観できない。
しかし具体的な来年については、ファンダメンタルズを見る限り世界経済が衰退に陥る可能性は低く、成長率が今年をやや上回る可能性がある。これは次のいくつかの面から理解できる。
まず、世界経済の最も危険で苦しい時期が過ぎ去ろうとしている。世界の主要国は逆周期調節措置を講じ始めており、リスクに備えている。
国際貿易は今年5月より、下げ幅が拡大する新たな時期を迎えた。世界経済は8、9、10月に最も苦しい時期を迎えた。世界の製造業は2012年ぶりの疲弊を示した。米国、ユーロ圏、中国という3大経済体の製造業PMI(購買担当者指数)が軒並み低下し、ユーロ圏のドイツの製造業PMIは9月に41.7ポイントという確定値をつけ、2009年6月ぶりの低水準となった。中国のPMIは11月に50.2に落ちた。その他の主要国のPMIは50以下だが、その前の3カ月と比べると回復傾向を示した。
危機は往々にして、誰も危機を感じない時に生じる。世界の各主要経済体は危機の脅威を感じ、逆周期調節措置を講じ始めており、その成果が徐々に顕在化している。中国は4月から逆周期調節を開始しており、欧米諸国は8、9月に危機を感じると逆周期調節措置を講じた。米国が8月に利下げを決定すると、30数カ国がこれに続いた。米国、欧州、日本が量的緩和を再開した。これらの逆周期調節の措置は10月以降、徐々に効果を発揮している。世界の経済データは徐々に好転している。