上述した3つの可能性のうち、1つ目は日本政府の未来志向の計画の戦略的構想だ。米国からさまざまな圧力に直面するが、日本はこの構想を徐々に推進する。ただしそれは長期的で漸次的なプロセスになり、量の変化から質の変化という螺旋状の蓄積になる。2つ目は現在の菅内閣を含めた日本側が行っている対米外交の状態で、これは菅内閣の1年間の任期内における比較的穏当な手段だ。3つ目はいくつかの大きな要素によって決まる。これは例えば外交が不得手とされる菅氏が十分な外交手腕を発揮できるか。トランプ氏が再任した場合に日本により強硬になるか、米国の世界戦略により大きく貢献するよう圧力をかけるか。インド太平洋の地域情勢が緊張し、日本の安保の圧力が拡大し、やむなく引き続き米国に追随することで安全を保護してもらうかなどだ。
さらに、日米同盟内の溝と潜在的な食い違いは、この関係の今後の発展に多くの変化要因をもたらす。これらの要因が一定の程度まで蓄積され、放出された場合、インド太平洋地域に影響を及ぼす。
日本のインド太平洋構想、あるいは米国版の「インド太平洋戦略」のいずれも、米国のインド太平洋における韓国、豪州、さらにはフィリピンやシンガポールなどの一連の同盟関係や、急ピッチで構築を進めている米日豪印の4カ国安全枠組みと関連する。米国側が日本の負担を拡大し圧力をかけるか、あるいは日本がより大きな自主性を求めることで、日米同盟の枠組み内に一定の傾斜、さらには揺れが生じ、地域的な影響が生じる。
(一)日本が引き続き中国との関係好転の流れを維持し、対中外交をさらに強化する。中米の対立の激化という背景があるため、これは日本が「堅固な日米同盟」という基礎に影響を及ぼさずに、米国に強い姿勢を示すことによる悪影響を和らげる。しかも対中外交の強化そのものがコロナ後の日本経済の回復に有利だ。菅内閣の政権運営の基盤を固め、内閣の寿命を延ばす上で重要な推進力を発揮する。
(二)日本がロシアとの関係改善、特に両国の長期化する領土問題の妥協もしくは進展を求め続ける。日本の対露関係改善も日米安保同盟の今後の大きな変化であると言うのは、日露両国が完全に和解するための大きな障害となっているのが日米安保同盟という枠組みの存在であるからだ。日米関係により多くの不和が生じれば、日本は機に乗じ対露関係の改善・発展の大きな動きを見せ、領土問題の緩和・解消に向けさらに地ならしをする可能性がある。同じ論理で、EUとの関係促進も、日本が米国から当てこすりを受けた時に駆け引きを展開するための駒と資本を増やすことができる。
(三)検討中の米日豪印の4カ国安全枠組みについてだが、インドや豪州、及びその他の外部要素の変化により、日米同盟関係のどちらかに心理的な変化が生じることで、完全に形成されない可能性がある。ポンペオ米国務長官が中心になり10月に4カ国外相会合が開かれる予定だが、菅内閣の対中・対露関係改善などより広い考慮に基づき、日本は4カ国の安全対話枠組みに基づき「アジア太平洋版NATO」を作る米国の計画に慎重な姿勢を維持する。この点から論じると、菅氏の「アジア太平洋版NATO」に反対するという意思表示は、メディアのインタビューを受けた時の「社交辞令」ではなく、実際に深い考えがあるのかもしれない。(筆者・厖中鵬 中国社会科学院日本研究所副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年10 月3日