中国の勃興をどう捉えるかはいま世界各国が避けて通れない重要な課題となっている。中国の隣国である日本はとりわけ複雑な心境だろう。昨年から中日両国民の好感度には温度差がみられる。新たに在中国日本大使に着任した垂秀夫氏は中国メディアの取材で「中国側は日本の対中感情が良くない原因とその状況をどう変えていくかをしっかり研究してもらいたい」と話した。(中国国際問題研究院アジア太平洋研究所特別研究員 項昊宇氏)
この発言は、日本の外交官の立場からすると非難するほどのことではないかもしれないが、筆者からすると日本の対中感情が良くないことを中国だけのせいにしていて、公平を欠いている感が否めない。両国の民意の落差の原因を客観的に分析してこそ解決の糸口が見つかるというものだ。
少し前まで中国人の「反日」感情に日本側は頭を抱えていた。ここ最近になって中国人の日本に対する認識に少しずつ変化が生じている。その理由としてまず中日の直接交流の拡大があげられる。日本の観光庁の統計によると、2019年の中国大陸部から日本への観光客は1000万人近くとなり、2012年の5倍となった。
日本に対する認識の変化は安倍晋三前首相に対する見方にも表れている。保守的な政治家の代表といえる安倍氏は平和憲法の改正を目標とし、その歴史認識は正しいとはいい難い。首相就任当初は中国もかなり警戒していたが、昨年の突然の辞任後は中国国内の世論からは肯定的な評価が与えられた。中国の学界や世論では、日本に対する「再認識」が一つの潮流にもなっている。中国経済のよりハイクオリティな成長への移行にともない、国家統治(ガバナンス)、社会的公平、エコ環境、防災・減災などの分野における日本の成果に注目し、冷戦後の日本の経済・社会の発展を改めて評価しようとする観点が増えてきている。中国人の日本に対する認識が「一般的な歴史問題化」から脱却し、包括的に論理的かつ多元的になってきていることが様々な現象から見て取れる。これは中国社会が進歩し、成熟してきているという証拠だ。
その一方で日本国内での中国に対する認識はいまだ時代の変化に対応できていない。中国に関する報道の主流はやはり消極的なものやマイナスのものばかりで、日本人の対中感情に影響を与えている。近年中国に関する好感度が下がってきている原因は様々なことが考えられる。日本のメディアの影響もあるが、根深いところで日本の中国に対する「傲慢さ」と「偏見」を反映しているともいえる。戦後日本は廃墟の中から急速な経済成長を果たし、西側の近代的な自由民主思想を全面的に吸収し、改めて先進資本主義国家に登りつめた。その日本が長年貧困にあえいでいた中国の急成長を目の当たりにし、感情的にまだそれを受け入れられずにいる。