「初めから道があるのではないが、歩く人が多くなると初めて道が出来る」魯迅の「故郷」にあるこの言葉は、多くの人の学生の頃の記憶を呼び覚ますことだろう。共同通信社の16日の報道によると、中国の文豪、魯迅が短編「故郷」を発表してから今年で100周年になることを記念するため、都留文科大(山梨県)、上海外国語大学、湖南大学によるオンライン討論会が開かれた。中日両国の約30人の大学生が画面を通じ、「故郷」について議論・交流し、その作品への各自の見解を語った。
今回のオンライン討論会を企画した都留文科大の周非・准教授によると、日本では「故郷」を人間関係を中心に読み解く傾向があり、中国では「旧社会への批判」などの観点を重視する。「故郷」の主人公「私」が20年ぶりに幼少期の友、潤土と再会したときの描写をめぐり、これまでは「20年とは魯迅の書き間違いで、実際には30年だ」とする観点が多かったが、今回の討論会では「これは単なる書き間違いではなく、魯迅が意図的にしたものかもしれない」との見方が示された。都留文科大の田中実名誉教授は、日本の学界では「故郷」の一文について理解が異なることを紹介した。オンライン討論会に参加した中国の大学生は、「これまで気づかなかったが、日本の研究会の新たな観点は興味深い」と述べた。
情報によると、中日両国の大学間の交換留学が新型コロナウイルスの影響を受けていることから、周氏は今回のオンライン討論会を企画した。都留文科大の女子大生は「感染症により中国に留学に行けなかった。そもそも、それほど強く留学に行きたいと思っていたわけではないが、今回の交流イベントにより再び行きたいという気持ちが強くなった」と話した。
魯迅は中国で評価が高いが、日本でも広く影響を及ぼしている。東京大学名誉教授、魯迅研究専門家の藤井省三氏によると、「故郷」を教科書に収録する出版社は戦後の1952年で1社のみだったが、その後徐々に増加した。1972年の中日国交正常化後、すべての教科書にこの作品が収録された。つまりほぼすべての日本の学生が魯迅の「故郷」を読んだことがあるということだ。また日本のノーベル文学賞受賞者である大江健三郎氏、作家の村上春樹氏らも作品に魯迅の影響があることを認めている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年1月18日