より強くなる中国との共存は、豪州、インド、日本、米国に不快感を与えている。彼らが4カ国間の安全保障対話枠組み「4カ国戦略対話(クアッド、Quad)」を通じ備えをするのは理解できる。しかしこれはアジアの歴史の流れを変えない。その理由はシンプルだ。まず、4カ国の地政学的利益と脆弱性が異なる。次により根本的な理由だが、彼らは間違った駆け引きに置かれている。アジアの戦略的な大きな駆け引きは軍事ではなく、経済にある。米誌「Foreign Policy」(電子版)が伝えた。
豪州は最も脆弱で、経済面で中国に強く依存している。豪州人は30年に渡る成長を誇りにしているが、これは豪州が中国の一つの経済省としての役割を演じたために過ぎない。今や豪州は墓穴を掘った。結果はすでに多くの面で決まっている。中国には待つ余裕がある。豪州の学者であるヒュー・ホワイト氏が「中国は多くのカードを握っているが、これは豪州にとって問題だ。国際関係におけるパワーとは、少ない犠牲により相手国に大きな犠牲を強いることだ……(中略)……モリソン首相とその腹心たちはこれを理解していないようだ」と指摘した通りだ。
注意すべきは、豪州のキーティング元首相が2019年に「いわゆるクアッドはまったく成立しない。インドは米中問題について曖昧な態度を示しており、中国を念頭に置くすべての行動への参加を避けようとしている。日中の和解は顕著で、ゆえに日本は中国をけん制するいかなる計画にも参加しない」と警告したことだ。インドは中国に徐々に強硬な態度を取っているが、米国の確かな同盟国になる可能性は低い。
日本も脆弱だが、形式が異なる。豪州は幸運で、周辺は友好的なASEAN諸国だ。日本の周辺諸国のうち、日本はロシアや韓国との苦しい関係を処理できる。この両国の経済規模が小さいからだ。しかし日本人は、今やより強い中国に適応しなければならないことを敏感に察している。これは真新しい現象ではない。20世紀前半を除くと、日本はほぼ常により強い隣国である中国と平和的に共存していた。日本は今後、この形に戻ることになる。しかし双方の関係の変化は小さく漸進的で、直ちに友人になることはない。しかし日本は微妙なシグナルを発し、中国の核心的利益に理解を示す。難航するとしても、中日双方は徐々に安定的に調整する。
インドと中国の問題は正反対だ。2つの古い文明国として数千年に渡り共存してきたが、ヒマラヤ山脈に隔てられているため直接的な接触は少ない。現代テクノロジーにより、高山はすでに越えられるようになった。
米国の環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱が中国に地政学的なプレゼントを与えたが、インドの東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の参加見送りもそれと同じことだ。大きな駆け引きは経済にある。中国を中心とする巨大な経済生態系が地域で変化の最中にある。次のデータは参考に値する。中国の2009年の小売商品市場の規模は1兆8000万ドルで、米国は4兆ドルだったが、10年後には6兆ドルと5兆5000億ドルになった。中国の輸入額は今後10年で22兆ドルを超える可能性がある。1970−80年代に米国の巨大な消費市場がソ連を打ち負かしたように、成長を続ける中国の巨大な消費市場は地政学をめぐる大きな駆け引きの最後の決定者になる。
そのため4カ国のインド洋における軍事演習は、アジアの歴史の指針を変えない。4カ国の経済的な利益と歴史的な弱点が異なるため、クアッド成立の理由がなくなる。しかも米国の最も揺るぎない同盟国である韓国を含め、クアッドへの加入を急ぐアジア諸国は他にない。アジアの未来はQuadではなくRCEPで記される。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年1月29日