中国の指導者である鄧小平は1978年、パナソニックの大阪工場を視察し、創業者の松下幸之助に断れない招待を出した。「中国の現代化建設のため協力していただけないだろうか」後者はこれに「はい」と返事し、深い影響を生んだ。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が伝えた。
中国市場は現在、パナの事業全体の4分の1に当たる1兆7000億円を占めている。松下幸之助の中国に対する長期的な支持が、パナ最大の市場の一つを作り、同社の最も強力な競合相手を生んだ。今や中国で世界の冷蔵庫と洗濯機の半数、エアコンの85%が生産されている。パナソニック中国・北東アジア社社長の本間哲朗氏は、この歩みをすべて見守った。本間氏は現在、この102年の歴史を持つ企業の重要決定を主導している。すなわち家電部門の本社、もしくは一部事業を中国に移転するか否かだ。
パナは中国で約5万2000人の従業員、80社以上の子会社を持つ。同社は現在の米中貿易戦争より長期を見据え、10−20年先に着目している。本間氏は「日本の製造業が中国のような巨大な市場を立脚点としなければ、世界で生存することはできないと思う」と述べた。中国市場は全世界の競争者を集めるため、激しい競争が展開される。中国市場で競争に加わることができれば、世界市場で競争するための入場券を手にしたに等しい。
この戦略には内的リスクが存在する。日本貿易振興機構(ジェトロ)の丁珂(音訳)研究員は、対中直接投資により中国(企業)がより容易に日本企業に追いつけるようになると述べた。ところが日本企業はそれでも中国における存在を強めている。成熟した経済体と比べると、急成長する中国はより多くの利益が見込める市場だ。より多くの利益はより多くの開発費を意味し、競争において主導権を握り続けることができる。
日本企業が対中投資を続けることには、中国が巨大かつ成熟したサプライチェーンを持つという別の理由がある。自動車のような複雑な製品は、大量の部品と巨大なサプライチェーンネットワークが必要だ。これらは中国にすでにあるが、東南アジアなどの新興の競争相手にあるとは限らない。実際に現地のサプライヤーが不足していることから、すでに東南アジアに移転した企業は往々にして、中国から部品を輸入せざるを得なくなっている。
パナの例は、アジア最大の2つの経済体の運命の変化を反映している。日本の経済規模は2000年の時点で中国の4倍だった。中国の経済規模は2010年に日本を抜き、今や日本のほぼ3倍になっている。自国政府及び米国からの圧力があっても、日本企業は中国市場への依存から脱却できない。