東京オリンピックの開幕まで4カ月を切った。先日には海外観客の受け入れを正式に断念している。この前代未聞の決定が発表されると、米紙「ニューヨークタイムズ」は「新型コロナウイルスが大流行する中、現実的な大譲歩だ」と評した。
すでに延期という苦渋の決断をしていただけに、今回の決定は泣き面に蜂だ。そして依然として大きな暗雲のように、コロナが前途多難な東京オリンピックの上空を覆い続けている。
チケットのキャンセル60万枚以上 経済損失は1500億円以上
海外観客の受け入れ断念による最も直接的な損失は、チケットの払い戻しだ。東京オリンピック組織委員会はキャンセルの総数が63万枚超に上ると見積もる。
損失はチケット収入だけにとどまらない。フランス通信社は、東京オリンピックを「史上最も高くついた夏季オリンピックになるかもしれない」と評する。
1年の延期に伴い、会場の持続的な確保やコロナ対策にかかる費用は巨額なものとなっている。大会経費の総額はすでに1兆6400億円に膨らんだ。東京オリンピック組織委員会は資金が不足しており、約150億円を東京都に負担させている。
本来はオリンピックで経済浮揚を果たし、コストを回収するはずだった。しかし海外観客が訪日できないことにより、観光や宿泊、広告などの関連業界は大きな影響を受けることになる。もともと東京オリンピック期間に200万人の旅行客を迎えるという大きな目標を立てていたが、それも水泡に帰すことになった。
野村総研のエコノミストである木内登英氏は、海外観客の受け入れ断念による経済損失は1500億円以上になると見込む。
オリンピックでは、アスリート以外にも会場周辺の様々な広告が観客の目をひくものだ。
米誌「Adweek」は、「トヨタ、コカ・コーラ、Visaなどオリンピックのグローバルスポンサーは、総額で約10億ドルのスポンサー料をIOCに支払っている。4年間の公式オリンピックスポンサーとして、1つのブランドで1億ドルを投入していることになるだろう。しかし問題は、『1回の中継イベントに価値などあるのだろうか』ということだ」と指摘する。
“復興”の名目を失った 日アスリートも失望を隠せず
4年に1度のオリンピックは、本来なら世界の市民が共有する祝祭である。日本も海外観客を大いに重視していた。「日本人が2011年の東日本大震災からの復興を世界に示す大きな機会である」という共通認識が、日本の各界にあった。
IOCのバッハ会長は海外観客の受け入れ断念について「大変申し訳ない」と述べたが、オリンピックのファンとアスリートは依然として失望を隠せないままだ。
バドミントン日本代表の桃田賢斗氏も失望を隠さない。「私を応援してくれるファンが海外にたくさんいます。公式試合に彼らがいないのなら、モチベーションが下がるし、孤独な気持ちになります」。
イギリスを代表するパラリンピックの陸上金メダリスト、ノエル・タッチャー氏も、今回の決定に「会場で家族やファンの応援がなければ、選手たちは必ず失望するだろう」と述べている。
数奇なオリンピック
2020年3月19日、東京オリンピックの聖火がギリシャから運ばれた。この時、新型コロナウイルスはすでに世界各国に波及していたが、東京オリンピック組織委員会の人々は期日通りに大会を行うと断言していた。しかしわずか5日後、延期を正式に表明した。
2021年に入ってからは、スキャンダルが頻出した。
まず東京オリンピック組織委員会の森喜朗会長が、2月に述べた女性蔑視発言により辞任した。3月には、東京オリンピックの開閉幕式のクリエイティブディレクターを担当する佐々木宏氏が、女性タレントの渡辺直美さんに豚の姿で出演させる案を提案したことが判明して大きな物議を醸し、3月18日に自ら辞意を表明した。
それ以外にも、オリンピック開催前の大きなイベントである聖火リレーが3月25日に始まったが、現状で30名以上のランナーが辞退している。その中にはスポーツ界や芸能界などの有名人も含まれる。理由として、森喜朗氏の女性蔑視発言への抗議などがある。
森発言は、聖火リレーだけでなく、4か月後のオリンピックに対しても物議を醸す行為に等しい。
日本のコロナ状況は現在、やや増加に転じているものの、全体的に安定している。しかし3月21日に一都三県で緊急事態宣言が解除されたことに伴い、東京のコロナ状況が再度悪化する可能性が排除できないと、ある日本メディアが憂慮している。
東京オリンピックの最終的な運命は、「朝日新聞」が述べるように、菅首相が一貫して求めてきた「完全な形」での開催はすでに実現不可能になったということである。しかし現在、「不完全な形」での開催も、今後のコロナ状況にかかっている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年4月1日