日本がベトナムに無償提供する100万回分のアストラゼネカ製新型コロナウイルスワクチンが16日午後、日本の成田空港から離陸し、同日夜にベトナムに到着した。日本は中国台湾地区に今月124万回分のワクチンを提供しており、海外へのワクチン提供は今回で2回目となった。日本政府が発表した計画によると、7月からさらにインドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアにも提供する。日本が世界保健機関(WHO)の枠組みを通さず、余ったワクチンを特定の国に提供していることが注目されている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は16日、「国内のワクチン接種が遅れているが、日本はアジアでワクチン外交を展開している。その裏側には地政学的な理由がある」と伝えた。
共同通信社の報道によると、日本の茂木敏充外相は15日、東南アジア諸国にワクチンを提供する計画を発表した。またこれらの国を選んだのは感染状況の他に、日本との関係を考慮してのことと述べた。「日本が提唱する『自由で開かれたインド太平洋』を実現する上でも極めて重要な国々だ」という。報道によると、日本が提供するのは、いずれも日本で生産される英アストラゼネカ製ワクチンだ。茂木氏はまた、日本がWHOによる国際的なワクチン共同調達の枠組み「COVAX」を通さずワクチンを供与するのは、「承認を得る手続きに時間がかかる恐れがあるため」と述べた。
「日本経済新聞」によると、日本はアストラゼネカと1億2000万回分のワクチン調達契約を結んでいた。うち3000万回分は米国から原液を輸入し日本で包装し、9000万回分は日本国内で生産。現段階で包装がどれほど終わっているかは不明。日本政府は5月下旬にアストラゼネカ製ワクチンの緊急使用を許可したが、同ワクチンの接種で血栓などの問題が生じうるため、国内での接種を見送っている。半年内に使用方針を定められなければ、ワクチンが保存期間を超える恐れがある。報道によると、日本政府は米国のファイザー及びモデルナから調達したワクチンがあれば全国民の接種に間に合うと判断しており、アストラゼネカ製ワクチンは今後、日本の公共接種の対象外になる。菅義偉首相は海外に3000万回分を供給する方針を掲げた。支援先については、感染状況及び日本との関係を考慮した上で判断するという。
「ニューヨーク・タイムズ」によると、日本では現在まで約2500万回分の接種が行われており、人口全体の15%が接種を1回以上受けている。この割合はインドとほぼ同等で、大多数の豊かな国を大きく下回っているが、アジア太平洋へのワクチン供与の妨げになっていない。ベトナムは菅氏が昨年首相に就任した後、真っ先に訪問した国でもある。報道によると、中国は東南アジアなどの地域で「外交色の強い魅力の攻勢」により中国製ワクチンを普及させている。東京国際基督教大学の政治学者のスティーブン・ナギ氏は、「日本は自国のワクチン外交を一つのバランスとして見ているようだ。日本は手をこまねき中国の行為を見るつもりはない」と述べた。
香港紙「南華早報」は16日にアナリストの話として、日本政府が東南アジアにワクチンを提供するのは、少なくとも同地域における中国より劣ったイメージを高めるという狙いがあると伝えた。テンプル大学ジャパンキャンパスの政治学教授の村上博美氏は、「日本の動機は友人と隣人への支援であり、地政学的な理由もある。日本政府がCOVAXを回避したのは、ワクチンの提供先を指定できないからだ」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2021年6月17日