「インド太平洋経済枠組み」、日本が落ち着いていられない理由は?

中国網日本語版  |  2022-02-11

「インド太平洋経済枠組み」、日本が落ち着いていられない理由は?。日本にとっては、この「インド太平洋経済枠組み」への対応はまさに厄介極まりない。下手をすれば墓穴を掘ることになるからだ…

タグ:インド太平洋事務 経済 安全 

発信時間:2022-02-11 14:12:33 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

文=笪志剛 黒竜江省社会科学院北東アジア研究所所長、研究員

 

 ブリンケン米国務長官の豪州訪問は、米日印豪の間で波紋を呼んだが、日本に落ち着きを失わせた。

 

 日本は米国が「インド太平洋事務」を重視することに歓迎を示し、ブリンケン氏に対して「クアッド(4カ国戦略対話)が力強い枠組みになりつつある」ことを安心していると強調し、日米の経済「2プラス2」により産業安全や経済安全などの協力を促すことに一定の期待を寄せた。しかし米国はCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)に復帰しないと表明した上で「インド太平洋経済枠組み」を掲げ、日本を落ち着けなくさせた。言い換えるならば、米国は「インド太平洋地域」の外交と安保の動向を主導するだけでなく、さらに日本やインドなどの国をこの中国けん制を強調する汎地域経済戦略に抱き込もうとしている。日本にとっては、この「インド太平洋経済枠組み」への対応はまさに厄介極まりない。下手をすれば墓穴を掘ることになるからだ。

 

 まず、日本が落ち着けないのは、米国の意図をはっきり読み取っているからだ。

 

 米国が日本の「インド太平洋経済枠組み」における経済規模の支持力、貿易及び投資のけん引力、協力の結び付きを強める見本としての力を重視していることは間違いない。「インド太平洋地域」の多くの国が、自国の利益に基づき「経済的には中国に依存し、安全面では米国に依存する」という両方に賭ける手段を講じているが、米国は「インド太平洋経済枠組み」を利用し経済的な弱点を補強しようとしている。経済・貿易の影響力が大きな日本が最良のパートナーであり、またこの枠組みを実現させる能力が最大の「トレーダー」であることは間違いない。

 

 経済枠組みの基礎により安保協力をさらに掘り下げ、「インド太平洋」戦略の経済と安全の両翼による飛行を促す。日本は自国を抱き込もうとする米国の戦略的な意図を熟知しているが、バイデン大統領の「実益を伴わないリップサービス」のような新たな経済計画への対応に苦しんでいる。安保面ではすでにしっかり米国に縛られ身動きが取れないが、経済面でさらに米国に追随すれば泣きっ面に蜂になる。

 

 次に、日本が落ち着けないのは、自国の役割に対する複雑な心境のためだ。

 

 これは、「インド太平洋地域」が日本が長年に渡り耕してきた経済をメインとする地域であり、南アジアが日本企業の新たな産業の輸出先になっており、かつ東南アジアが日本によって経済の「裏庭」とされているためだ。日本と東南アジア諸国の2020年の貿易額は2040億ドルで、同年の対ASEAN投資額は2兆3000億元にのぼった。日本は内心、米国がこの「インド太平洋経済枠組み」により自国が長年に渡り取り組んできた成果を奪い、自国の「インド太平洋経済構想」を破壊するのを望んでいない。

 

 ましてやCPTPPが2018年に発効し、その後新たに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定が発効しているため、日本は「インド太平洋経済枠組み」が米国による環太平洋経済連携協定からの離脱を補う代替品になれば、自国が効果的に主導するCPTPPが形骸化し、RCEPの協力も弱体化されることを懸念している。特に枠組みの冷戦思考の色合いは、日本の多国間主義のイメージを落とす。

 

 最後に、日本が落ち着けないのは、自国の通商の実益への影響を懸念しているからだ。

 

 (1)既存の多国間通商枠組みの基礎をいかに固めるか。日本は多国間通商主義を貫く粘り強さを持ち、長年の努力により米国不在のCPTPPを発効させ、米国の圧力に耐えRCEPを実現させた。岸田文雄首相は就任以降、RCEPやCPTPPなどの枠組みを利用し各方面に手を伸ばし、安倍時代の行き過ぎた措置を調整した。慎重に米国を頼りに海洋権益と地政学的安全を求めると当時に、日本が長年の努力で形成した多国間通商の優位性を守っている。

 

 (2)対中経済・貿易関係の重みと現実とのバランスをいかに取るか。この枠組みには経済と産業の面で中国を「包囲」するという位置づけがあるが、現実を見ると中日貿易額は昨年3714億ドルにのぼり、中国の消費市場が日本経済全体の安定の重要な要素になっている。日本の経済・貿易界及び産業界の関係者は、安全戦略上の「米国追随で中国けん制」を経済面にまで広げれば日本にとってメリットがなく、しかも米国がこの犠牲の肩代わりをできないことを知っている。中日は経済の相互補完性が高く、これは日米の比ではない。そのため日本は慎重にバランスを保つしかない。

 

 (3)この枠組みの有効性をいかに確認するか。同枠組みは貿易円滑化、デジタル貿易、サプライチェーン及びグリーン技術、労働基準、インフラ、低炭素化などの魅力的な言葉を並べた。しかしこれをいかに実現するのだろうか、参入措置と具体的なルートはどこにあるのだろうか。日本のみならず一部の東南アジア諸国も、米国のこの措置が内政に対応するための一時的な発想であることを懸念している。日本にとっては、米国に追随し中国をけん制しても経済面で人心を得ず、必然的に自国の経済・貿易の利益も損ねる。最も重要なのは、日本がこれがまったく不可能であると知っていることだ。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年2月11日

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