文=王鍵 中国社会科学院研究員
日本の2022年度予算案が22日に衆議院を通過し、24日に参議院の審議に入る。与党が衆参両院で多数の議席を占めていることから、参議院に送られてから30日後に成立する可能性が高い。この予算案の総額は107兆円で、10年連続で過去最大となった。これには新型コロナウイルス対策、岸田文雄首相が提唱する「新資本主義」の支出が含まれる。日本社会の新資本主義をめぐる議論が再び生じている。
岸田氏は就任早々、新資本主義という政策の主張を掲げ、その後何度も説明を行った。分かりやすく言えば、これは池田勇人の「所得倍増計画」の現代版で、また近代日本の創業者である渋沢栄一の「義利合一」という経済倫理思想を由来としている。
岸田氏の新資本主義は、アベノミクスに別れを告げることを意味する。安倍氏が政権運営した8年弱における日本のGDP成長率は平均0.9%(目標は2%)で、デフレを完全に根絶できなかった。京都大学名誉教授の佐伯啓思氏は、スペース拡張、技術、欲望により経済成長を実現する「資本主義」はすでに臨界点に近づいていると指摘した。そこで岸田氏は「市場万能型」の新自由主義、分配がなかったアベノミクスの必要な修正を行い、二極化の厳しい状況を変える決意を下した。
しかし岸田氏の新資本主義は前途多難のようで、大きな圧力が存在する。「日本経済新聞」の週刊誌「日経ビジネス」は今年1月19日に、安倍晋三氏の署名入り記事を掲載した。安倍氏はその中で、「経済を成長させるためには、私の政権で推進したアベノミクス以外に方法はない……(中略)……岸田氏はこの基礎を変えるべきではない」「現段階ではこのいわゆる新資本主義を理解できる人はほとんどいない」と記した。
アベノミクスによって利益を得た一部の大企業も反発している。例えば楽天株式会社の三木谷浩史社長は、岸田氏が「資本主義をまったく理解していない」と公然と批判した。また新資本主義が外国からの投資に不利と懸念する声もある。ハーバードビジネススクール日本リサーチセンターの専門家である佐藤信雄氏は、「外国人投資家はこの手の変化に極めて敏感だ。日本がアベノミクスの前の時代に戻ると外資が判断すれば、企業は自身の収益力を改善しなければ彼らを失望させることになるだろう」と述べた。
新資本主義は国民から期待されているが、しっかり実行されるかについては未知数だ。例えば岸田氏が金融所得課税を引き上げると述べると、日本の株価が8日連続で下落するという「岸田ショック」が生じた。政府は増税案の撤回を余儀なくされた。
岸田氏の新資本主義の大きな方向性は理にかなっているが、外向き型経済国である日本の経済は、国際市場から大きな影響を受ける。岸田氏は政権運営後、米国に追随する経済安保政策を積極的に推進し、これを国の経済安全を保証するものと理解し、因果を転倒させている。市場経済の法則に背き、さらに新資本主義の目標に背いている。力不足で荷が勝ちすぎ、その新資本主義の初心が失われるかもしれない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年2月24日