中国社会科学院日本研究所研究員 張季風
2012年以降、中国の経済発展には新たな変化が見られた。年平均2桁台の高成長から中高成長に移り変わり、高品質発展段階に入った。成長率がやや低下したが、GDPの絶対量は倍増した。中国の経済規模が世界経済に占める割合は2012年の11.3%から21年の18.5%に上がり(7.2ポイント増)、世界2位をしっかりキープした。中国経済の力強いけん引を受け、中日経済・貿易協力も力強い安定的な発展を手にした。
この10年で国際情勢が目まぐるしく変わり、中日政治関係が極めて複雑だったが、中日二国間の貿易及び双方向の投資が長期的に発展した。10年間の中日二国間貿易額は年平均で3000億ドルを上回り、21年には前年比17%増の3714億ドルに達した。新型コロナウイルスと中日政治関係の悪化の影響が重なる逆境においてこれほど大幅な成長が実現されたことは、中日経済・貿易協力の強靭性を十分に示した。日本の対中直接投資は安定的に増加し、年平均で43億ドルとなった。中国に進出した日本企業の収益率は15%と、日本の対外直接投資収益率の約8%という平均水準をはるかに上回った。中国の対日投資も初歩的な規模を形成し、21年の投資額は8億1000万ドルにのぼった。
2017年以降の中日関係の改善に伴い、二国間貿易・投資及び地域協力が回復し、かつ「一帯一路」枠組み内での中日の第3国市場における協力に顕著な成果があった。中日双方は2018年に総額182億ドルの52件の契約を交わした。中日間では同年さらに総額2000億元の通貨スワップ協定が結ばれた。これは中日が5年ぶりに通貨スワップと金融協力を再開したことを意味する。5年間中断されていた中日省エネ・環境保護総合フォーラムも2017年に再開された。さらに中国が2020年に、2030年までにCO2排出量ピークアウトを達成し2060年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を発表した後、中日両国は同分野をめぐる協力を持続的に掘り下げた。特に両国企業は水素エネルギー技術の研究開発をめぐり非常に意欲的に協力している。国家発展改革委員会は2020年6月に、成都市、天津市、大連市、上海市、蘇州市、青島市の6つの中日地方協力モデルエリアを批准し、同年10月末にはさらに北京「中日イノベーション協力モデルエリア」を批准した。7つの中日産業団地及びモデルエリアは積極的に日本側と協力を展開している。これは地方経済協力がコロナ後の中日両国の経済協力の新たな見所になる可能性を示している。
特に喜ばしいことは、2020年に「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)が署名され、2022年に発効したことだ。これは中日の経済・貿易協力に対して極めて重要な意義を持つ。過渡期を終えた後、日本から中国に輸出される製品の86%の関税が撤廃され、中国から日本に輸出される製品の88%の関税が撤廃される。これにより中日間にも自由貿易関係ができた。中日両国の企業はアジア太平洋の産業チェーン・サプライチェーンの構成を絶えず最適化し、自身の発展を急ぐことができる。
この時期を全体的に俯瞰すると、世界は百年に一度の大変動を迎え、中日経済・貿易協力の環境に非常に多くの変化が生じた。かつては貿易と投資が中心だった中日経済・貿易協力構造にも変化が生じた。金融、財政、地域、科学技術、企業、地方などの両国の協力が力強く発展し、多次元、各ルート、多様化、各レベル、全面的な協力の局面が生じ、協力の質と水準が絶えず向上した。
今後を展望すると、中日経済・貿易協力はさらにさまざまな試練を迎えるが、RCEP枠組み内で経済以外の要素がもたらすリスクに対応する能力が上がると見られる。中日両国には長期的な経済・貿易協力の歴史と協力の基礎がある。中国市場は巨大で、圧倒的多数の日本企業が中国経済に期待している。中国経済の高品質発展のけん引を受け、未来の中日経済・貿易関係の見通しは明るい。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年10月11日