日本の岸田文雄首相は先ほど、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールの歴訪を終えた。日本の首脳による中東訪問は約3年ぶりで、注目を浴びた。この3カ国はいずれも世界の重要な産油国であり、日本の最も重要な油ガス輸入先でもある。ロシアとウクライナの衝突によりエネルギーの供給が不足する中、「石油」は自ずと岸田氏の訪問の主な目的となった。しかし今回の訪問に関する日本政府の声明やメディアの解読を見ると、目的はそれだけに留まらないようだ。
岸田氏の湾岸諸国歴訪にはより注目すべき、目に見えない地政学的な目標がある。日本は湾岸諸国自身とその大国との関係に近年激変が生じていることを察知し、その中で存在感をアピールしようとしている。
湾岸地域レベルで見ると、ロシアとウクライナの衝突後、主要エネルギー輸出国である湾岸諸国はすでに大国の「お得意先」になり、戦略的な自信と自主性が大幅に上がった。湾岸諸国は多元的なバランスをとる戦略を開始し、大国の間で各方面に手を伸ばしている。湾岸エネルギー販売市場のアジア諸国への転向に伴い、湾岸諸国は「東向き」の戦略を実施し、日本との経済・貿易・投資協力を発展させるチャンスをもたらした。日本は湾岸諸国自身の位置づけと対外戦略の変化に気づき、新たな湾岸の影響力の版図において席を占めようと試みている。
大国の中東戦略を見ると、米国が中東及び湾岸諸国で戦略的撤退を実施し、同地域で存在を強めるチャンスを日本に見せつけた。米国とアラブ諸国のパートナー関係に緩みが生じ、多くの分野で協力の水準が低下し、エネルギー面ではさらに競争関係が形成された。日本は米国の中東政策の調整に伴う変化を、中東で影響力を拡大するチャンスと見ており、この機を利用し政治的な影響力と市場シェアを拡大しようとしている。
日本は湾岸諸国への進出を急ぐ中、さらにいわゆる「同地域における中国の影響力が急拡大」という旗印を掲げている。第1回中国・アラブ諸国サミットの成功、サウジとイランの歴史的な和解の仲裁を象徴とし、中国の中東における影響力が大幅に上がっている。「一帯一路」イニシアチブや、「世界安全保障イニシアチブ」「世界発展イニシアチブ」「世界文明イニシアチブ」などの中国の理念と中国のプランが湾岸諸国から積極的な反応を得ており、日本を焦らせている。そこで日本政府は声明で今回の訪問の重要性を強調し、湾岸諸国歴訪は一刻の猶予も許されないとした。これは、日本が今回の訪問を通じ中国の中東外交への対応で大きく進展したほのめかしているとの見方もある。今回の訪問に関する日本メディアの報道では、不在のはずの中国が存在感を放っており、「中国との競争」によって日本と湾岸諸国の関係を解読する論評も少なくない。このような論調は次の2つの視角に基づく。
(筆者・丁隆上海外国語大学中東研究所教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年7月24日