中国大陸部で80万人の従業員を抱える世界最大規模の加工企業・富士康は、今年1月から若い従業員が連続して飛び降り自殺を図ったことから注目を浴びてきた。自殺を図った8人のうち6人が亡くなり、重体の2人は今でも治療中だ。
自殺した従業員たちの年齢や就業年数はとても似通っており、全員が地方出身者で年齢は17歳から28歳まで。働いていた期間は1年未満で、2008年入社は1人、2009年は5人、2010年は2人だった。
富士康グループや警察が提供した資料によると、ほとんどの自殺の原因はプライベートなことだった。富士康グループの劉坤広報担当者は、従業員を極端な行動に走らせたのは、恋愛や婚姻などの感情面での挫折や、家族を襲った災難だと説明している。
若い職員たちの連続自殺は、新世代の農民労働者の精神面の困惑を反映し、中国が今、解決しなければならない深刻な問題の一つになっているとアナリストは指摘する。
「若者は学校や家庭、故郷を離れ、外の世界でチャンスを探し、運命を変えようとしているが、感情面がまだ成長しておらず、経験不足なため、さびしい、頼りない、やるせないなど、さまざまなマイナスの感情に苛まれるでしょう」と、深セン現代社会観察研究所の劉開明所長は指摘する。また、「企業は利益を追求しているため、一日も早く重い仕事に適応できるような労働者になれるよう彼らを鍛えており、生理面や心理面から目をそらしている。一部の敏感で精神的に弱い若者が極端な結末を迎えるのも、それほどおかしくないことである」とした。
富士康の職員である馬さんは、「毎日10時間以上仕事をしなければならず、退屈でたまらない。しかも規則がきびしく、仲間に声をかけると上司に叱られ、仕事上のミスとして記録されることもある。そのため、悩みがあっても上司に相談するなんて考えもしなかった」と話している。