中国IT業界の旗手として知られる唐駿氏に持ち上がった学歴詐称疑惑により、中国では「信用」が7月のキーワードとなった。唐駿氏は「学歴という小さな問題が大きなニュースになるとは、自分があまりにも有名だからか、あるいは中国には他にニュースがないからか」と反発しているが、この問題はカリスマのイメージダウンというよりも、知らないうちに社会の信用度が低下しているといった意味で非常に深刻である。
この学歴詐称問題は中国人の「信用恐慌」に拍車をかけた。インターネット上のアンケートでは、55%以上が「周りが信用できない『信用恐慌』にしょっちゅう陥る」と回答。ある著名人はブログに、「私たちはほとんど嘘に囲まれた社会で生活している」と書いている。
唐駿氏は、成功のほかに信じるものはないといった功利主義が社会全体にはびこっていることを象徴する存在といえる。この問題について絶えず追及し、議論し、改めて考えている人は、すでに脆くなった社会の信用度をこれ以上汚してはならないという考えからであろう。
中国社会の信用度に4割が「不満」
雑誌『小康』はこのほど、清華大学メディア調査実験室と共同で中国の社会信用度評価調査を行った。今回の調査は、東部は北京、上海、広東、中部は河南、湖北、安徽、西部は四川、甘粛、貴州で実施され、調査対象の分布はそれぞれ36%、32%、32%であった。
信用度は主に人間関係、企業、政府の3つの面から評価。総合的な調査結果と関係部門の統計から算出された2009~10年度の中国の信用指数は61.7点で、前年度より0.6点上昇した。中国の信用指数はここ数年で大きく変わることはないと見られる。
調査結果によると、現在の中国社会の信用度に「満足していない」が4割近くを占め、「満足している」を8ポイント上回った。
人間関係の信用度については、半数近くが「種々の理由により、信用を守れないこともある」と回答した。また、「利益優先」や「信用を守ると損をし、信用を守らないほうが得をする」といった考えが、誠実さや信用を欠く原因となっている。
「身近に信頼できる人が4~6人いる」人が多数を占めたが、「信頼できる人」の上位6位は順に、両親、兄弟姉妹、配偶者、友人、同級生、親戚であり、恋人はこの中に入らず、同僚との距離も遠いことがわかった。
企業の信用度については、最も信頼できない業界は仲介サービス業がトップで、続いてテレビショッピング、保健用品、広告、不動産業であった。
軍人、農民の信用度が高い
29種の職業別信用度調査では、軍人、農民、教師、学生、記者の信用度が最も高かった。軍人と農民はこれまで(2006年~09年)も始終トップクラスにあり、両者に対する中国人の信用面のイメージはゆるぎないものであることがわかる。記者は今回初めて上位5位にランクイン。昨年は13位であった。興味深いのは、中医師は10位であったのに対し、西洋医は19位と、差があったことだ。
また、最も信頼できない職業は、不動産仲介サービス業者、セールスマン、不動産会社の社長、広告マン、サッカー選手。不動産関係の職業が2つ入っていることから、不動産価格の高騰に対する不満があるのが見て取れる。
地域別信用度では、北京、山東、香港、上海、黒竜江の出身者が上位5位に選ばれた。マカオ出身者は8位、台湾出身者と広東出身者は16位だった。
G20諸国では、ドイツ人、英国人、カナダ人、フランス人、米国人が上位5位に入り、特にドイツ人は47.7%の支持を集め、2位の英国人を17.8ポイントも上回った。
中国を除くG20のアジア5カ国のなかで上位10位に入ったのは日本人だけで、8位だった。G20アジア5カ国のランキングは次の通り。上位から順に、日本人、韓国人、サウジアラビア人、インド人、インドネシア人。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年8月2日