全国陸上競技大会兼アジア大会選考会がこのほど山東省済南市で開催された。けがのため北京五輪棄権に終わった男子110メートル障害の劉翔選手は年内の復帰が予想されていたが、今大会も不参加に終わった。これに先立ち中国陸上協会はアジア大会選抜基準を、「2009年世界選手権上位3人」から「五輪上位6人、2009年世界選手権上位6人のうち、トレーニング中の選手がアジア大会出場資格を有する」と改めた。出場見送りが続いている劉翔選手を「保護」し、今年の広州アジア大会への出場切符を与えたことで、多くの論議を呼んでいる。
済南をスキップして広州へ直接行くことを、劉翔選手は望んでいなかったかもしれない。彼と弱ったアキレス腱を守り、けがの再発を防ぐためにも医師は彼に対して今後も安心してトレーニングを続け、けがの回復を待つように勧めている。最近になり彼が国際大会出場を断念したのも、この理由からだった。
国家体育総局陸上管理センター副主任を務める国家陸上チームの馮樹勇・総監督は、「劉翔の今回の全国大会不参加は、国家陸上センターが彼を特別扱いしているわけではない」と説明する。
中国陸上協会の今回の規定改正は公平ではないと疑問視する声が少なくないにもかかわらず、それでも人々の多くは劉翔選手の出場を期待している。この青年はすでに中国国民の心に、不滅の陸上界の記憶としてとどまり、多くの国民は広州で再び彼が中国国旗を肩から羽織った4年前の一幕が演じられるのを夢見ている。
アジア大会選考会に出場した選手の一人は彼に理解を示す。「劉翔選手のお陰で陸上が注目され、アジア大会の陸上人気も高まっている。彼が出場しないとなれば、広州アジア大会組織委員会も困ってしまうでしょう」。
劉翔選手が選ばれないとなれば注目を集める選手はいなくなり、陸上協会は窮地に追い込まれることになる。協会は「次の劉翔」の育成を諦めてはいないが、彼のレベルに到達する選手はなかなか現われないだろう。
広州アジア大会の目玉は依然として劉翔選手であり、協会も彼に依存したままだ。今回の規定改正が劉翔選手一人のためであったか否かにかかわらず、中国陸上界全体が直面する厳しい現状を反映していることは疑いない。
「人民網日本語版」2010年8月12日