伊伊ちゃんという「奇跡」を目の当たりにし、楊峰さんを含む遺族らの中から「人命探査装置がきちんと作用していなかったのでは?」「温州市特殊警察部隊のように責任ある救助活動をしてくれる人がいれば、自分の家族ももしかしたら助かっていたのでは?」といった疑問がわき上がって来るのは当然といえよう。夜が明けるのも待たずに救助活動を打ち切ったにもかかわらず、犠牲者の遺体の多くは午後になってようやく発見され、伊伊ちゃんのような「奇跡」の生存者までも見つかったのはなぜか。そうした問いかけには、きちんとした真実の答えが必要である。報道官の「奇跡だ」の一言で済ませられる問題ではない。今回の救助活動に対し、遺族や国民が疑問を持つのは当然なのだ。なぜなら、事故車両内にまだ遺体がいる状況下で早々と救助活動を打ち切るなど、どう考えても軽率な判断だと言うほかないからである。
中国で何らかの事故が起こる度、中央、地方を問わず、政府高官は常に人命救助を最優先とする指令を出してきた。だが、これほど大規模な追突事故が発生したにも関わらず、わずか5時間で救助活動を打ち切り、まだ多くの遺体が車内に取り残されている中で、事故車両を動かすよう指示するなど、その「対応の速さ」にはあきれかえるばかりである。確かに中国では常に「速さ」が強調されてきた。列車に関しても、速ければ速いほどよいとされているが、事故の後の復旧・運行再開への速さは尋常ではない。速度を追求するのはもはや問題ないが、そのために規律や科学を無視し、生命を軽んじることは絶対に許されることではない。伊伊ちゃんの「奇跡」の生存劇は、救助活動を「超特急」で終わらせた者の目を覚まさせるのにまたとない出来事だったはずである。
楊峰さんだけでなく、国民も同様に事件の真相解明を求めている。中国中央テレビの白岩松アナウンサーが、報道官の発言に関して、「技術が先端だから合格だ、大丈夫だと認識してはならない」と辛辣な批判を行なっている。本当にその通りなのだ。あれほど大きな事故が起きたというのに、何の真相解明もせず、「私はそう信じている」という報道官の言葉を鵜呑みにし、それを信じる国民はいないはずである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年7月27日