イー・アクセスと競合他社が激しい競争をすることで、日本のインターネット接続料金は低価格化が進み、技術革新も促進され、サービスはより高品質になった。その結果、日本の利用者は、世界で一番安く最も高速・高品質なインターネットを利用できるようになった。これが2度目の通信革命だ。
固定電話がモバイルやパソコンに取って代わる今、千本氏の新しい夢は、モバイルブロードバンドを実現し、3度目の通信革命を導くことだ。
千本氏が、イー・アクセスの子会社としてモバイルブロードバンド事業の準備や企画をする「イー・モバイル株式会社」を設立したのが2005年1月。同年11月には携帯電話事業者として認可され、2007年4月にサービスを開始し、モバイルブロードバンド市場を他社に先駆け、いち早く開拓し、現在、下り速度21Mb/sという世界最高速のサービスを提供している。2010年1月末時点での契約数は約235万件で、国内の携帯データ通信市場のトップリーダーである。
しかし千本氏の起業史が順風満帆だったわけではもちろんない。その過程では様々な困難にぶつかり、周りの人たちから成算を疑問視されたり、落胆させられることも珍しくなかった。しかし千本氏は「私は全く後悔したことがありません。何もしないでただ見ている人たちが体験できない成功や充実感を味わうことができて、本当に心から感謝しています。古い体制に満足せず、新しいことにチャレンジし続けていくことは、ビジネスを成功させる唯一の道です」と話す。
「相互往来する日中の人たちにサービスを提供したい」
いかに外国に進出し、ビジネスを拡大するか。これは多くの通信企業が直面する課題である。講演後の質疑応答である学生は、イー・モバイルが中国に進出するかどうかを千本氏たずねた。
「イー・モバイルの基地局は、『中国IT企業の雄』と呼ばれる華為技術を用いています。中国では今、第3世代移動通信システム(3G)が始まったばかりですが、3Gのほとんどは音声ばかりで、モバイルブロードバンドにフォーカスしたオペレーターを聞いたことがありません。もしそこにチャンスがあれば、私たちは前向きに考えるかもしれません。日中両国は隣国同士で、この春節の休みには多くの中国の人たちが日本を訪れ、逆に中国を訪れる日本人も多い。そういう人たちに対してモバイルブロードバンドによる良質なサービスを提供することができるのであれば是非やりたいと思います」
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月19日