習近平国家主席は、政権発足後に進めてきた多くの分野での改革の理念を集約して「4つの全面」というスローガンを打ち出した。「4つの全面」とは、①小康社会の建設、②三中全会決議の改革の深化、③法に基づく国家統治及び④党員の厳しい統治の4つをすべての面で実現させていくことを意味している。
さてこの集大成された「4つの全面」が実現されれば、中国は今後どのように変化し、また日本にはどのようなメリットがあるのだろうか?本稿では、「4つの全面」の実行にあたって、外国人研究者の立場から4つの提言を行いたい。
第一の「小康社会の建設」は、今回の政権で初めて提議されたものではなく、改革開放以来、中国社会の近未来の目標を示すものとして提示されてきたものである。筆者の理解では、当面の目標は2020年に一人当たりGDPで1万ドルを突破することであり、すなわちこれは、中国が「中進国の罠」を突破することを意味する。
現在の中国は、一人当たりGDPの数値を順調に伸ばしてきており、2020年の目標達成は難しいことではない。しかし「小康社会」の本来の主旨は、中国社会が“全体として”ある程度豊かになることである。その意味で考えれば、現状の中国社会は所得格差が拡大しており、数値は目標に近づいてきているが、当初理想とした「小康社会」の実現に近づいてきているとは言い難い。「所得配分問題」が今回の全人代の重要なテーマのひとつになっているのは、そのためであろう。