第二の「三中全会決議の改革の深化」は、中国の政治・経済・社会の課題をほぼすべて包含し、これを全面的に改革していくものである。300以上ある改革課題のうち、筆者が最も注目しているのは、国有企業改革による混合経済化、特に『民営企業活性化への全面支援』であり、これが第二の提言である。
国有企業改革は、国有企業の経営効率の低さ、企業統治の問題、独占化の弊害などが注目されがちだが、筆者は民営企業参入促進による産業の活性化の方に大きな期待をかけている。例えば中国の技術イノベーション停滞を招いているのは、国家主導による研究開発や研究費の集中が原因である。市場や顧客のニーズを理解しているのは、企業特に民営企業であり、彼らが主体となって研究開発が進めば、自主創新政策は大きく前進するはずだ。日本の研究開発の主力は、世界の市場で戦っている民間企業であり、それが継続的な技術イノベーションを生み出している。
また総合的にみると、中国の民営企業は国有企業よりも投資効率や経営効率が高く、これは経済学の言葉で言えば労働生産性が高いということを意味する。労働生産性の伸びは、中国経済の潜在成長率の最も大きな割合を占めているので、民営企業が活性化すればそれだけ中国経済の成長エンジンが強化されるということになる。
今後中国の民営企業が発展しグローバル化が進むと、日本企業との提携の機会も増えていくだろう。日中企業提携によるグローバル展開は、今後大きなビジネスチャンスをもたらすことだろう。
第三の「法に基づく国家統治」とは、これまで“法の外”にいた一部特権層をすべて法の枠内に戻し、環境問題などの社会問題に対する責任を明確化することである。またこれまでの“人治”と揶揄された行政サービスが、国家により定められた制度によって一律化・透明化され、やがて個人裁量や不必要な手続き費用も減少していくだろう。第三の提言は『行政サービスの透明化・公平化』である。外国企業の立場から言えば、中国の行政手続きが人による裁量からルール化された手続きに移行することを大いに歓迎する。