国際鉄道
呉衛平の紹介によると、中国の鉄道は国内以外にも、周辺国家とも結ばれている。中国の鉄道に乗って、欧米各国に行くことも可能なのである。
現在、中国には周辺各国とつながる10本の鉄道路線がある。それはロシアが3本、朝鮮が3本、モンゴルが1本、カザフスタンが1本、ベトナムが2本である。
ロシアとつながる3本の鉄道には、中国の満州里からロシアのサバイカルスクをつなぎ1951年に国際運行がはじまったもの、中国の绥芬河からロシアのグロデコヴォをつなぎ1951年に国際運行がはじまったもの、中国の珲春からロシアのマハリノをつなぎ、2000年より正式に運行されたものがある。
朝鮮と通じている3本の鉄道は、中国の丹東から朝鮮の新義州(シニジュ)をつなぎ、1954年から国際鉄道客運・貨物運行が始まったもの、中国の図們から朝鮮の南陽(ナムヤン)をつなぎ、1954年から国際鉄道貨物運行が開始されたもの、中国の集案から朝鮮の満浦(マンボ)をつなぎ、1954年から国際鉄道貨物輸送が始まったものがある。
モンゴルと通じる鉄道は、中国のアレンホトからモンゴルのザミンウードまでで、1991年に正式運行がスタートし、1992年に国際鉄道客運・貨物運行がはじまった。
カザフスタンとつながる鉄道は、中国のアラシャンコウ(阿拉山口)からカザフスタンのドルジバまでで、1991年に正式に運行され、1992年に国際鉄道客運・貨物運行がはじまった。
ベトナムと通じる2本の鉄道は、中国の凭祥からベトナムのドン・タンまでのものは1955年に正式運行し、同時に国際鉄道客運・貨物運行が始まった。中国の昆明からベトナムのハイフォンまでのものは1958年に国際運行が始まった。
呉衛平によると、これら10本の鉄道路線は大きくふたつに分けられるという。ひとつは区域内の輸送ルートで、おもに二国間や周辺国との相互の客運や貨物輸送、たとえば中国・ベトナム、中国・朝鮮、中国・カザフスタン、中国・ロシアなどの鉄道ルートである。
もうひとつは、大陸をまたがる大陸ブリッジ運送ルートで、たとえばアラシャンコウからドルジバの鉄道や、中国東部の港である連雲港、青島、天津と日本、韓国、アメリカ間の輸送を受け持つルートで、満州里からサバイカルスクを通る鉄道とアレンホトからザミンウードの鉄道は、中国と東・西ヨーロッパ国家との間をむすんでいる。
呉衛平によると、国際線路の建設を急ぐために、中国政府は西部地区に以下の鉄道の建設を予定しているという。ひとつはアジア・ヨーロッパ間の大陸ブリッジの南部支線である中吉鳥鉄道で、この線は北西部から国外へ出るルートとなり、東は中国の南疆鉄道の終点カシュガルである。西はキルギスタン共和国を通りウズベキスタン共和国のアンディジョンで中央アジア鉄道と結ばれる。
さらにもう1本、東南アジアをむすぶ国際ルートである中緬(中国・ミャンマー)鉄道があり、雲南省の昆明を起点とし、大理・瑞麗をへて、ミャンマーのラーショを通り、最後はタイ・マレーシア鉄道につながってそのままシンガポールまで行くものである。これは、中国西南地区と東南アジア各国の連絡を強めるために積極的な作用を及ぼすことだろう。
中国にはさらにもう1本、西南国際鉄道の新ルート、東南アジア各国とむすぶ中印(中国・インド)鉄道の計画がある。雲南から西にゆき、ミャンマーを経由してインド、バングラディシュに達し、そこの鉄道と結ばれる。中国国内の鉄道網がバングラディシュ湾の大きな港と結びつき、西南地区ひいては中国の、南アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパなどの国家との経済連携と開放に非常に便利になる。
今後の鉄道建設の重点
中国の鉄道営業キロ数は世界第三位で、鉄道キロ数自体は世界の鉄道の6%に過ぎないが、世界の鉄道運送量の4分の1を担っている。鉄道運送が中国経済・社会発展にもたらす「ネック」を突破するために、2008年10月に中国は2004年の『中長期鉄道網計画』に調整を行い、発布・実施した。調整案は2020年の全国鉄道営業キロ数の計画目標を2004年に決めた10万キロから12万キロ以上にひきあげ、そのなかでも客運専用線を1.2キロから1.6キロ、電化率を50%から60%に、新路線の建設は1.6万キロから4.1万キロに引き上げ、中国鉄道建設の青写真を刷新した。
「60年間、中国の鉄道は輝かしい成果を収めてきました。しかし中国の人口や大きさに比べると、また、先進諸国と比べると、中国の鉄道はまだまだ大きな発展の余地があります」と、呂長青はいう。
中国の資源分布と工業分布は不均衡で、北の石炭を南に、西の石炭を東に、北の食糧を南に、西の綿を東に運ぶという決定がなされており、同時に人々の生活水準もあがり、都市化が加速したため、郊外・都市間の旅客運輸の需要が急増した。この種の長距離・大量運送には、必ずコストが安く運輸能力が大きく、エネルギー消耗の低い、効率よくかつ安全で汚染が少ない鉄道輸送方式が、交通システムの中心とならねばならないと、呂長青は語る。
中国政府の計画によれば、高速客運鉄道は今後の発展の重点である。客運専用路線の建設や、都市間の客運軌道交通とすでにある路線の改造によるスピードアップによって、基本的な客運専用路線を骨格とした、全国の主要大中都市をつなぐ快速な客運ネットワークが形成される予定であると、呂長青は語る。現在中国にはまだ13,000キロのスピードアップが行われていない鉄道路線があり、それらに改造を行い最高速度が200キロ以上になるようにするとのことである。
資源運輸専用路線、とくに石炭の輸送も建設の重点とされる。中国政府は山西、内蒙古、陝西、貴州などの十大石炭生産地の輸送のため、客運専用路線などのルートを建設すると同時に、石炭運輸ルート建設と既存の線路の運輸能力拡大のための改造に力をいれ、大きな力をもつ先進的な、機能が整った石炭運輸システムの形成を急ぐ。
中国はさらに港に通じる線路の建設にも力を入れる。鉄道で港と内地の市場を連結するのである。同時に東と中西部をつなぐルート建設に力をいれ、西部の鉄道ネットワークを拡大し、西南・西北の国際的なルートを開拓する。
これらの目的を達成するため、中国政府は昨年11月、今後3年間で2億元の鉄道投資を行う計画を通過させた。