(三)改革開放の深化を堅持し、科学的発展に向け体制・メカニズムの完備にたえず取り組んだ。われわれは改革開放の深化を国際金融危機に対処する強大な原動力とみなして、体制上の障害の除去に努め、対外開放レベルを絶えず引き上げた。
重点分野と肝心な分野の改革は急ピッチで進んでいる。消費型付加価値税への転換を全面的に推進している。精製油価格と租税・費用の改革は順調に進み、新たな精製油価格形成メカニズムが規範にのっとって機能している。国家開発銀行の商業化を目指す業態転換と農業銀行の株式制改革は着実に推進され、クロスボーダー取引における人民元建て決済の試行作業がスタートした。「創業ボード」(新興企業向け市場)が本格的に発足し、自主イノベーションやその他の成長型新興(スタートアップ)企業向けの新たな資金調達ルートが切り開かれた。地方の政府機構改革も秩序正しく繰り広げられ、事業体の分類改革の試行作業も着実に進められている。集団山林権制度の改革は全面的に展開されており、農家への使用権付与が決定した林地は一億ヘクタールにのぼり、全国の集団所有林地の六〇%を占めるが、これは土地の家庭請負経営に次いでわが国の農村経営制度に関わるいま一つの大きな変革といえるものである。
開放型経済は絶えずレベルアップしている。外需の確保に向けて一連の政策措置を打ち出し、国際慣行に見合った形で輸出企業を後押しし、短期輸出信用保険九〇〇億ドルの引受を達成し、大型プラント輸出向けの信用保険を四二一億ドル供与した。輸入の拡大を奨励している。昨年の後半以降、輸出入の下落率が著しく縮小し、国際市場でのシェアが定着しつつあり、通年の輸出入総額は二兆二〇〇〇億ドルに達した。外資利用の下降傾向に歯止めをかけ、通年の外商直接投資の実質利用額が九〇〇億ドルとなった。企業が「海外に出ていく」戦略は、世界的不況の逆風を跳ね返して活発な事業を展開し、金融分野以外の対外直接投資や対外工事受注の売上高がそれぞれ四三三億ドル、七七七億ドルに達した。国際マクロ経済政策にかかわる対話・協調および経済貿易・金融協力に積極的に参与し、国際金融危機への共同対処において建設的な役割をはたしてきた。
(四)民生の改善に力を入れ、社会事業の発展を速めた。国際金融危機に対処しなければならない困難な状況の下で、われわれは民生の保障と改善をさらに重んじ、人民大衆が最も関心をもち、最も直接的で、最も現実的な利益にかかわる問題を着実に解決した。
より積極的な雇用政策を実施した。雇用促進に関する政府の責任が強められた。中央財政は就業特別資金を四二六億元計上し、前年度比五九%増となった。経営難に苦しむ企業を対象とした社会保険料の支払いの猶予、もしくは一部の料率の引き下げを行い、また再就職を促進する業者の租税減免および補助金支給などの政策を実施して、企業が雇用を確保し、増やすことを奨励した。一連の就職サービス活動を繰り広げ、複数ルートを通じて公益性のある雇用を創出し、大卒生が末端で就職したり、軍隊に入隊したり、企業・事業体で就職をめざした実習を行うことを促した。またこの一年間で都市農村の勤労者二一〇〇万人を職業養成プログラムに参加させた。これらの措置の実施により、就業の基本的安定が促された。
社会保障体系の健全化が進んでいる。省レベルの養老保険プール制度がおしなべて確立され、農民工を含む都市部企業職員・労働者養老保険ポータビリティー規定も実施された。新しいタイプの農村社会養老保険が三二〇の県で試験的に進められたことにより、わが国の社会保障制度整備事業が歴史的な一歩を踏み出すことを促進した。中央財政は社会保障資金を二九〇六億元計上し、前年度比一六・六%増となった。企業定年退職者の基本養老金は五年連続して増額し、昨年は一人当たりさらに一〇%引き上げた。農村の「五項目(衣・食・住・医・葬)の保護」世帯向けの生活保護基準、優遇扶助対象者手当基準、都市農村の最低生活保障基準はいずれも増額した。保障タイプ安住プロジェクトへの中央財政補助金は五五一億元で、前年度より二倍増やした。各種保障タイプ住宅の新築、改・増築件数は二〇〇万戸にのぼり、バラック区の再開発に伴う住宅の提供件数は一三〇万戸となった。全国の社会保障基金の積立額は、前年度比四四・二%増の六九二七億元に達した。社会保障体系は強化された。
よりいっそう教育の公平を促した。全国の教育支出は大幅に増加し、そのうち中央財政の支出は一九八一億元で、前年度比二三・六%増となった。都市農村義務教育に関する政策を全面的に実施し、中央は農村義務教育経費として六六六億元を投下し、農村小中学生の一人当たりの公用経費をそれぞれ三〇〇元と五〇〇元にするという目標が一年繰り上げて達成された。義務教育段階の教師を対象とした業績給制を実行した。中等職業学校に通う農村困窮家庭の学生および農業専門の学生を対象とする学費無償化政策の実施がスタートした。国の学資援助制度はいっそう完備し、学資援助を受けた学生は約二八七一万人にのぼり、困窮家庭のこどもが家庭の事情のため学業を継続できないことを基本的に解消した。
医薬・医療衛生事業の改革は着実に進められている。医薬・医療衛生体制改革の実施に取り組んだ。医薬・医療衛生に充てる中央財政の支出は、前年度比四九・五%増の一二七七億元であった。都市部職員・労働者および都市部住民の基本医療保険加入者数は四億一〇〇万人、新しいタイプの農村合作医療制度への加入者数は八億三〇〇〇万人となった。中央財政は四二九億元を計上し、これを閉鎖・破産した国有企業の定年退職者の医療保険問題解決のために充てた。基本医薬品制度を導入した末端医療衛生機構は三〇%を占めている。中央財政の支援の下、一群の県クラスの病院や郷・鎮の中心衛生院、コミュニティー医療衛生サービスセンターが整備された。B型肝炎ワクチンの接種範囲を拡大するなど、重要な公衆衛生サービス特別プログラムの実施に取り掛かった。食品・医薬品安全特別対策に力を入れて取り組んだ。突如襲来した新型インフルエンザ(H1N1)に直面して、われわれは法律に基づき、科学的知見にのっとって対応し、人民大衆の生命の安全を効果的に守り、社会の安定を維持した。