二、二〇一〇年の主要任務
今年は、引き続き国際金融危機に対処し、安定した比較的速い経済成長を保ち、経済発展パターンの転換を速める上で肝心な年となるとともに、「第十一次五ヵ年計画」の諸目標を全面的に達成し、「第十二次五ヵ年計画」期の発展に向けてしっかりした土台を固めるための重要な年となる。
今年の発展の環境は昨年よりよくなるかもしれないが、直面する情勢は極めて複雑である。さまざまなプラスの変化とマイナスの影響が交互に消長し、短期的な問題と長期的な矛盾が絡み合い、国内的要因と国際的要因が相互に影響を及ぼし、経済・社会の発展の中で「両立し難い」問題が増える。さらに国際的に見れば、世界経済は回復に向かい、プラス成長が見込まれ、国際金融市場は次第に安定しつつあり、経済のグローバリゼーションが深く進展する大きな趨勢に変化はみられず、世界経済の枠組みは大きな変革、大きな調整をともないながら新たな発展のチャンスを育んでいる。しかしそれと同時に、世界的な景気回復の基盤は依然として脆弱で、金融分野のリスクも完全に取り除かれておらず、各国とも景気刺激策をうち切るかどうか難しい舵取りを迫られている。また国際市場における大口商品価格と主要通貨の為替相場が大きく変動するおそれもあり、保護貿易主義が明らかに台頭し、さらに気候変動や食糧安全保障、エネルギー資源など地球規模の問題が複雑に入り組むことによって、外部環境における不安定、不確定要素は依然としてかなり多くなる。一方、国内に目を向ければ、わが国は依然として重要な戦略的チャンスに恵まれた時期にあるといえる。景気を回復し、好転させる土台がいっそう固められており、市場への信頼感は強まり、内需拡大と民生改善の政策効果が継続して現れ、企業の市場変動にたいする順応力と競争力も絶えず向上しつつある。しかしながら、経済・社会の発展の中で今なお一部の際立った矛盾や問題が存在している。経済成長には内生的な原動力が足りないし、自主イノベーション能力も十分でなく、一部の業種における生産能力過剰の矛盾は際立っており、構造調整は難しさを増している。全般的に見れば、就業のプレッシャーは高まりつつあり、就職口が足りないという構造的な矛盾も併存している。また農業の安定した発展と農民の持続的な収入増を促す基盤が固まっていない。財政・金融分野の潜在的なリスクが増大しつつある。医療や教育、住宅、所得分配、社会管理など諸方面の際立った問題は早急に解決を要する問題である。そこでわれわれは情勢を全面的に、正しく判断しなければならず、決して景気回復・好転の動きと経済運営の抜本的な好転とを同一視してはならない。さらに、憂国意識を強め、有利な条件とプラスの要素を十分に生かし、矛盾の解消に努め、いっそう綿密にさまざまのリスクや試練に対処する準備を整え、活動の主導権をしっかり握っていかなければならない。
今年の政府活動を立派にすすめるには、第十七回党大会及び同期三中、四中総の主旨を真剣に貫徹し、鄧小平理論と「三つの代表」の重要な思想を導きとして、科学的発展観を深く貫徹し、実行に移さなければならず、マクロコントロールへの取り組みと安定した比較的速い経済成長の維持、発展パターンの転換と経済構造調整の加速化、改革開放と自主イノベーションの推進、民生の改善と社会の調和・安定の促進に大きな力を入れるとともに、社会主義の経済、政治、文化、社会とエコ文明の建設を全面的に推し進め、小康社会の全面的建設のプロセスを速め、経済・社会の良好かつ急速な発展を実現することに努めなければならない。
今年度の経済・社会発展の主要な所期目標について次のように定める。GDPの成長率を八%程度とする、都市部の新規雇用を九〇〇万人以上とし、都市部の登録失業率を四・六%以下に抑える、消費者物価の上昇幅を三%程度にする、国際収支の状況を改善する、ということである。ここで次のいくつかの点について、重点的に説明を加える必要がある。GDP成長率の目標値を八%程度に設定したのは、主として「良好な発展」を最優先させることを強調し、各方面が活動の重点を経済発展パターンの転換や経済構造の調整に据えるよう誘導するためである。また、消費者物価の上昇幅を三%程度に設定したのは、昨年度の価格変動のタイムラグ要因や、国際市場における大口商品価格の波及効果、国内のマネーサプライや銀行貸出の増大によるタイムラグの影響及び住民の受容力を総合的に勘案するとともに、資源・環境税(料金)と資源関連製品の価格改革に一定の余地を残しておくためである。